20世紀最大のエンターテイナー、米歌手で俳優フランク・シナトラの歌声と世界的振付家トワイラ・サープの振り付けが最強タッグを組んだダンスミュージカル「カム・フライ・アウェイ」が7月、日本に初上陸する。「ザ・ヴォイス」といわれたシナトラの歌声とセクシーで美しいダンスの最高コラボ。スタンディングオベーション必至の舞台は7月24日から8月12日まで東京・渋谷オーチャードホールを席巻する。

 私が全米ツアー中の「カム・フライ・アウェイ」を見たのは、ケンタッキー州のレキシントンだった。世界的競馬「ケンタッキー・ダービー」の開催地だが、会場のオペラハウスで人々が熱狂したのは馬ではなく、流れてくるシナトラの歌声と、トワイラの振り付け・演出が織りなす官能ステージだった。

 舞台はニューヨークのナイトクラブ。さまざまな事情を抱えた男女4組が織りなす恋の行方を、卓越した歌唱力で「ザ・ヴォイス」といわれたシナトラの歌とダンスで描く。冒頭、アカペラの「スターダスト」からシナトラの甘い歌声が紡ぎ出す世界に引き込まれていく。

 「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」「ザッツ・ライフ」の歌は耳に心地よく、大胆な衣装の女性が軽々とリフトされ、官能的でアクロバチックなダンスは美しい。前席の太った老夫婦もいつしか腕を絡ませ、体を揺らす。生前録音した約1500曲から厳選された情感あふれる約30曲のシナトラの歌、えりすぐりダンサーのパフォーマンス、舞台上のビッグバンドの生演奏。まさに至福の時間が過ぎた。

 ビリー・ジョエルの曲を使った舞台「ムーヴィン・アウト」も手掛けたトワイラは、シナトラと親交があった。「親しみやすく、チャーミングだった。そしてプレーボーイ。彼が歌うと、歌詞を劇的に表現するのでアリアのように聞こえる。歌詞のドラマ性を表現できる才能がある」。09年のブロードウェー初日、観劇したシナトラの娘の歌手ナンシー・シナトラは感激で泣いたという。公演のラストは「マイ・ウェイ」と「ニューヨーク

 ニューヨーク」。トワイラは「日本公演は曲も増やし、よりエキサイティングな舞台を見せたい」と約束した。【林尚之】

 ◆フランク・シナトラ

 1915年、米国生まれ。「マイ・ウェイ」「ストレンジャー・イン・ザ・ナイト」などヒット曲を連発し、グラミー賞を個人で10回受賞。58本の映画に出演し、53年「地上より永遠に」でアカデミー助演男優賞。女優のエバ・ガードナー、ミア・ファローと結婚するなど計4回結婚。サミー・デービスJrやディーン・マーティンらを仲間に「シナトラ一家」とも言われた。98年5月14日に死去。