ひょうひょうとした中に滋味深い演技で舞台、映画、ドラマで活躍した文化功労者、劇団民芸代表の大滝秀治(おおたき・ひでじ)さんが2日午後3時17分、肺扁平(へんぺい)上皮がんのため都内の自宅で亡くなった。87歳だった。今年2月に肺がんが見つかり、6月の主演舞台を降板し、療養していた。

 大滝さんは5日、都内の斎場で荼毘(だび)に付された。密葬は近親者のみで約20人が参列し、無宗教式で行われた。戒名も付けられたが、生前、大滝さんは「秀」の字を入れてほしいと要望していたという。また、大滝さんの最後の仕事は、9月発売の浅田次郎氏の文庫本「天切り松

 闇がたり」の帯に書いた文章だったことも分かった。以前、ドラマ化された「天切り松」に出演した関係で依頼され、8月ごろに病院で執筆。「粋で色気があって、読みながらゾクゾクしたなぁ。広沢虎造が浪花節でうなったら、いいだろうね」とつづっている。