今日1月22日は、4日に亡くなった星野仙一さんの誕生日だ。

 仙台に来て年々、お祝いの輪が大きくなっていった。昨年は梨田監督はじめ楽天の関係者全員がお出迎え。室内練習場の入り口がすし詰めになった。「今日は何や」と照れたり「オレなんか祝ってるヒマ、ないだろう。営業行かんと!」と職員にハッパを掛けたり。笑顔の人垣に委ね、うれしそうにしていた。

 当初は少人数だった。楽天1年目の11年1月22日は、生出演した地元局で。報道関係者が恐る恐る、プレゼントのムートンブーツを渡した。持ち回りの幹事社が日刊スポーツで、気の利いた言葉のひとつも添えずに素っ気なく、新任の星野監督に差し出した。男だらけのバースデーソングが微妙な空気に拍車を掛けた。

 関わる誰もが構えていた。自分も例外でなく、しかも斜に構えるという当時34歳の格好悪さだった。最初の「お茶会」も盛り上がらず緊張した時間が流れた。重さを察した監督が「たばこを吸うヤツは遠慮せず吸って」と言った。コーヒーとたばこは合う。真に受けた面と生意気が半々で、すぐさま2本吸った。監督は遠目の自分をじっと見た。

 数日後、宿舎ロビーで仕事をしていると監督が帰宿してきた。「たばこ吸おう」と言われた。初めての1対1で、よく覚えている。

 「お前、オレが言ってすぐ吸ったな」「失礼だったらすいませんでした」「いきなり吸ったヤツは記憶にないが、それでいい。誰かが吸ったから、はダメだ」

 お茶会で寝たツワモノが過去1人だけいて、大好きになった話をしてくれた。

 就任してすぐ、球団事務所にふらっと現れ「一緒に頑張りましょう」と頭を下げ、職員に驚かれた。緊張や警戒、弱さを見透かされまいとする虚勢…星野監督はいろんなことに目をつむり、襟を全開にして飛び込んでくれた。未開の地で精いっぱいの配慮だったろうし、配慮への感謝に比例して、誕生日を祝う輪が大きくなったのだろう。特に球団のみなさんは、とりわけ悔しい1月22日と察する。【宮下敬至】