甲子園に「殿馬」が帰ってきたヅラ~。19日、第90回記念選抜高校野球大会(23日開幕、甲子園)の甲子園練習が行われ、36年ぶり4度目出場の日大山形が登場。人気漫画「ドカベン」のキャラクター殿馬一人から名付けられた高橋殿馬内野手(3年)が、聖地で躍動した。“秘打”で魅了する本家と同じ「二番」が濃厚な打撃練習では、168センチの小柄な体から広角に鋭い打球を連発。初戦となる第3日第3試合の智弁学園(奈良)戦で、どんな秘打が飛び出すか注目だ。

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 漫画の世界のごとく、小さな体が甲子園の黒土の上で存在感を示した。

 「殿馬~、ナイスプレー」「いいね~殿馬」

 高橋が、攻守で仲間からたたえられた。

 「他の球場とは違う独特の雰囲気。すごく広く感じた。でも気持ち良くプレーできました」

 守備では華麗なグラブさばきで軽快に。打撃では野手の間を抜ける鋭い打球。初の聖地に笑顔があふれ続けた。

 野球好きの父薫さん(49)によって「殿馬」と命名された。候補は「岩鬼」との2択だった。父は「ドカベンの殿馬は、野球も一流だけど音楽も一流。運動でも文化的なことでも、どちらの道に進んでも一流になって欲しいと思って名付けました」。

 ポジションは殿馬ではなく、岩鬼と同じ三塁。「女の子だったらピアノとかを習わせたかったし、名前も私が付ける予定だったんです」と母慶子さん(49)。高橋は野球一筋でピアノ経験はなし。趣味は音楽鑑賞だが「クラシック…???」。それでも「野球に関連する名前ですし、すごく気に入っています。タイプ的には似ているし、名前に負けないように頑張りたいです」。

 自宅にあるドカベンのアニメDVDは全巻制覇。「(バレリーナのように回転しながら打つ)秘打!白鳥の湖は練習したことあります。難しかった」。本番では披露できそうにない。

 だが、昨秋の練習試合で「秘打」が1度だけ成功したことがある。バットを地面にたたきつけて打ち、砂煙を上げる打球で野手の捕球を妨げる「秘打!花のワルツ」のようだった。低く鋭いゴロを放つと、遊撃手の脇を抜けた。さらに加速し、左中間もスルスルと抜けた。ランニング本塁打の完成。高校通算1号だ。

 「ホームランを打つのは格好いい。でも狙って打とうとは思わない。チームの勝ちにつながる打撃をしたい」

 バントや進塁打を含めた“殿馬流”を貫く。16年センバツ王者智弁学園に勝って、全国制覇ヅラ~。【鎌田直秀】

 ◆高橋殿馬(たかはし・とのま)2000年(平12)6月19日、山形・真室川町生まれ。真室川小1年から真室川少年ジャイアンツで野球を始め、真室川中では新庄シニアに所属。日大山形では1年秋からベンチ入り。168センチ、60キロ。右投げ左打ち。血液型O。特技は木登り。岩鬼正美のような豪快な打球を飛ばす荒木準也監督からは「トンマ~」と呼ばれることもある。家族は両親、兄、祖父母。東日本国際大野球部新4年の兄剣(つるぎ)さんは、漫画「魁!!男塾」の主人公・剣桃太郎が由来。

 ◆殿馬一人(とのま・かずと)漫画「ドカベン」の登場人物の1人。明訓高の2番打者。小柄ながら俊足で守備範囲も広く、打撃センスにも優れる。「秘打・白鳥の湖」など奇想天外な打法も。