DeNAラミレス監督の100勝を祝う打ち上げ花火の大玉は、扇の要を担う戸柱恭孝捕手(27)から生まれた。「前の2打席はしょうもないアウト。必死にいきました」。ハートは熱いが頭は冷静だった。2球目のフォークを豪快に空振りすると「またくるな」と読んだ5球目を捉えた。打球は右翼ポール際に吸い込まれ、一塁ベースを蹴ったところでガッツポーズ。自身初の満塁本塁打で逆転に導き、一瞬にして球場のムードを変えた。

 一挙7得点を挙げた7回にも、左前適時打でこの試合5打点目をマーク。当初、左投手対策で、右打者の嶺井がマスクをかぶる予定だったが、前日16日の勝ち越し3ランで変更。2日続けての殊勲打で期待に応えた。

 1年目の昨季から辛抱強く起用してくれたラミレス監督に応えるには、練習しかなかった。遠征先から横浜へ戻る移動の新幹線は、いつも始発に乗り込む。移動中に仮眠をとり、横浜スタジアムへ直行。まだ誰もいないグラウンドで練習する。昨季打率2割2分6厘だった打撃だけでなく、捕球の練習も入念に行う。この日先発した久保も「ワンバウンドを完全に止めてくれる。見えないプレーで助けられた」と信頼を置く。

 今季から移動休み以外の休日はすべて返上してきた。直近の12日も体を動かした。「休みは、1億円稼ぐくらいビッグになってからとります。それまでは必要ない」。座右の銘は「NO PAIN,NO GAIN(苦労なくして得られるものはない)」。その言葉どおりに突き進み、監督に節目の勝利をプレゼントした。「ミスしても使い続けてくれた監督の100勝に貢献できてうれしい」と笑った。

 チームは今季初の4連勝で、苦手とする交流戦5割を達成した。今日18日の最終戦に勝てば、借金返済でリーグ戦再開を迎える。恩返しはまだ終わらない。【栗田成芳】