<西武3-4阪神>◇14日◇西武ドーム

 元気印が、逆転勝利への扉をこじ開けた。4戦連続先発の阪神新井良太内野手(28)が、適時打2本の2打点。7回の一撃は、二塁から兄貴浩が激走で同点ホームに滑り込んだ“兄弟コラボ”だ。西武ドームの屋根に、ヒーローインタビューの声が反響する。マイクがなくても大丈夫なくらい良太は声を張り上げた。

 新井良が吠えた。一塁ベース上で手をバシッとたたき、アッパーカットでガッツポーズを決めた。値千金の同点打だった。

 「スライダーがかなり頭にあった。とにかく何とかバットに当てて、食らいついて。うまく対応できて良かったです」

 1点を追う7回1死二塁。マイケルに1ボール2ストライクと追い込まれながら、外寄り低めのスライダーを押し込んでセンター返しだ。中前適時打で試合を振り出しに戻し、勝利への道を切り開いた。

 3点ビハインドの4回にも西口から右前適時打を放ち、追撃ムードを高めた。価値あるマルチタイムリーを喜んだ。

 2月の沖縄ではムードメーカーぶりも評価され、キャンプMVPに輝いた。とはいえ、出番が保証される立場ではない。開幕1軍メンバーの当落線上にいたのも確か。となれば、ライバルの動向が気になるのが当然だが…。開幕直前、良太は驚くほど無関心だった。

 「人のことはまったく気にならん。それがいいのか分からない。ダメなのかもしれんけど。だって自分はできることを一生懸命するしかないもん。人のことを気にしてられんよ」

 脇目も振らず、毎日全力を出し切った。休日には必ずと言っていいほど室内練習場に顔を出す。がむしゃらなプレースタイルは結果を呼び込み、現在の打率は3割2分4厘。4試合連続スタメン出場で、相手先発の右左に関係なく出番を増やしている。

 「タイムリーを打てたのは良かったけど、二つ目の時はその後の走塁をしっかりしないと。(本塁送球の間に)二塁まで行けた」

 貢献度抜群の2本で勝利に導いても反省を忘れない。そんな姿勢に野球の神様がほほ笑む。【佐井陽介】