まだ鳴尾浜がちらつきます…。絶好調の阪神伊藤隼太外野手(25)の心境を直撃-。3年目で1軍定着の兆しをみせるが、現在も優勝争いをするチームを気にする余裕はなく、自分の打席に全身全霊をかける。第1打席と第2打席に驚異的な打率を誇る男の本音に迫った。

 朝の新横浜駅に少しお疲れモードな隼太が現れた。12日から巨人3連戦、15日からはDeNA3連戦を関東で戦った。6試合はすべてナイター。休日を利用して帰阪することになった。隼太は立ち止まり、前夜の様子を話した。

 「疲れというか…。昨日(17日)もホテルに帰って、1週間終わったな~って、ボーッとしていました」

 この6日間(出場は5日)も打ちまくった。打線が1点しか奪えなかった13日巨人戦は3打数2安打。それを皮切りに、6連戦で16打数7安打を記録。打率は4割3分8厘を誇った。激動の1週間を終え、ホッと一息ついたのもつかの間。今日19日からも混戦を抜け出すために落とせない4位中日との戦いに突入する。

 「相手を気にしている余裕はないです。まだ2、3試合打てなかったら(2軍に)落ちるなっていう危機感がある。例えば来週の東京ドーム(26日からの巨人3連戦)とか全く考えられないですもん」

 素直な心境を隠すことはなかった。定着しつつある1軍での自分の立場や、優勝争いまっただ中のチーム状況など、考えている余裕はなかった。その気持ちは数字にも表れている。打席別の打撃成績を見比べると、第1打席(打率5割)、第2打席(同6割6分7厘)がずばぬけている。

 「やっぱり1打席目は意識している。そこで打てると乗っていけるから。それが今の流れにつながっているのかも」

 投手の研究、自らの準備。1打席目に焦点を合わせて集中しているからこそ、好調を維持できている。過去2年間は何度も1、2軍を行き来した。今季は我慢を重ねてつかんだ7月1日の1軍昇格以降、踏ん張り続けている。それでもまだ1カ月半。2年間苦しんだ隼太には「鳴尾浜」が依然ちらついている。【松本航】