<世界体操>◇2日目◇8日◇東京体育館

 日本女子がアクシデントを乗り越えて、来年のロンドン五輪出場を決めた。団体総合予選で合計223・543点で5位となり、上位8カ国に与えられる五輪出場権を2大会連続(11度目)で獲得。11日の決勝進出も決めた。3種目目の跳馬の練習で、この種目を最も得意とする飯塚友海(18)が助走で転倒して負傷。この大ピンチに同種目に代役出場したチーム最年少の寺本明日香(15)が、「1回半ひねり」を成功させて高得点をマーク。日本を救った。個人総合決勝には鶴見虹子と田中理恵が進出した。米国が合計234・253点でトップに立った。

 身長138センチの小さなヒロインが誕生した。チームで最も小さな寺本が大きな仕事で日本を救った。飯塚の負傷という突然のアクシデントに、代打出場で1回半ひねりで見事に着地を決めた。田中理と並ぶチームトップの13・966点。「100%出せてうれしかった」と大きく胸を張った。

 飯塚が転倒した瞬間は見ていなかった。突然、所属の坂本コーチに「行け行け」と言われて助走路に飛び出た。ウオームアップもほとんどなしの一発勝負。「何も考えずに跳馬に向けて走った」。しっかりと決め「快感です」と笑った。

 「練習ではいつもアップなしで跳んでいるんです」。男子世界王者の内村もウオームアップなしで練習し、アップをしたときに、より力が出る方法を試したことがある。寺本の内村作戦がまさにはまった形だ。

 昨年8月にミニ国体で左足首を剥離骨折。手術をすると1年かかると医者に言われ、だましだましやってきた。しかし、連戦で負荷がかかり痛みが増した。9月の山口国体後、練習ができなくなり、代表落ちのピンチも迎えた。結局、最後まで切れが戻らず、得意の跳馬から外されていた。

 子どもの時から、本当に小さかった。母恵子さん(47)は「少し心配しました」。ただ、幼稚園の鉄棒では、逆上がりを平気でこなし、小1で「鉄棒を習いたい」と恵子さんに直訴した。その日から、わずか10年で、自らの手で五輪を決め「夢を見ているような感じです」。

 飯塚のアクシデントの直後、寺本が憧れる最年長の田中理が「友海ちゃんの分まで頑張ろう」と励ましたという。逆にチームがまとまった。寺本の跳馬で勢いに乗ると、最後の段違い鉄棒では、5人すべてがぴたりと着地を決める最高の出来で締めくくった。寺本も14・683点で、8位で種目別決勝に進むおまけまでついてきた。

 アクシデントを力に変えた寺本と日本女子。昨年の1月から「22カ月合宿」でともに過ごした団結力で、11日の決勝では、66年ドルトムント大会以来45年ぶりのメダルに挑む。【吉松忠弘】