
2005年4月18日更新
アリ・ダエイがいなくても…
イラン国営通信・通信記者:ダヴィッド・モクタリ
W杯アジア最終予選は3試合が終わり、予想した通りイランと日本がB組の中で上位につけて、ドイツ行きの夢を現実のものにしようとしている。
イランは初戦のバーレーン戦こそ引き分けたものの、続く日本、北朝鮮戦を勝った。注目したいのは、FWダエイが日本戦では前半43分に退き、北朝鮮戦には出場しなかったことだ。
今のイラン代表チームにとってダエイの存在は大きいが、それは技術的な面よりも精神的な支えの部分の方が大きいと思う。36歳になったダエイは新しく登場する英雄たちに道を譲る時が近づいているのかもしれない。
このことについてイランのスポーツ新聞(イラン・ヴァルゼシ)はこう書いている。
「日本戦の後半と北朝鮮戦の最初から最後までダエイが欠席したことは、『彼がグラウンドの中にいなくともチームに大きな危機はやって来ない』ということを証明した」。
またイバンコビッチ監督も、試合の後に同紙のインタビューでこう語っている。
「ダエイはイランにとって大事な選手だ。しかし、勝利はもっと大事だ」。
ダエイは足のケガで北朝鮮戦に出場しなかった。ところがケガの状態についてイバンコビッチ監督は「今の状況は良く分からないが…」と言葉を濁している。ケガの状況が分からなければ、出場させるかどうか決められないはずなのに…。そういったことから、イラン人の中にはダエイのプライドを守るための「ケガ」ではないか、と思っている者もいる。
ダエイ抜きで戦った3月30日の北朝鮮戦はさまざまな意味で忘れられない試合となった。試合後に観衆が暴徒化し、イランの選手と審判は大変な脅威を感じた。実はイラン対北朝鮮の試合では、以前にも混乱したことがある。2003年11月12日、アジア杯予選の第2戦がテヘランで行われた時のことだ。ダエイが先制点を決め1−0とリードした後、観客から投げ入れられた発煙筒、もしくは爆竹が北朝鮮の選手に当たり、北朝鮮が試合をボイコットしてしまったのだ。その結果、3−0でイランの勝ちとなった。それがあるから、今回の試合前にイランの一部新聞は「北朝鮮では、何かが起こるかも」と報じたりもした。
今回の暴徒化が、その時の仕返しでは、という考えは当たっていないように思えるが、「何か」は起きてしまった。国際試合には選手と審判の安全を確保するのは基本だ。だが、残念ながらこの試合でそれは完全に守られたとは言えない。試合なのだから、どちらかが負けるのは当たり前のこと。感情的になるのはスポーツの精神に反する。北朝鮮は少なくともスポーツの場では、自らを世界のルールに適応させるべきだと思う。
在日イラン人にとって、それと同じぐらい驚きだったのが、平壌からのテレビ中継で日本人解説者がなぜか北朝鮮を応援していたことだ。イラン人には親日家がたくさんいる。多くのイラン人が(イランと日本が一緒にドイツに行ければいい)と希望している中で、この解説者の北朝鮮応援には正直言って、がっかりしてしまった。日本と北朝鮮の試合なら、ほとんどのイラン人が日本を応援するんだけどな。
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ダヴィッド・モクタリ(Davoud Mokhtari)


1963年、イラン・テヘラン生まれ。イラン国営通信の東京駐在の通信記者。86年に来日し、東洋医学などを学んだ。現在は通信記者として東京発のニュースをイランに送っている。日本語は堪能で、今回の原稿も、すべて日本語で執筆している。著書に「イラン・ジョーク集(笑いは世界をつなぐ)」(青土社)。
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