監督交代劇のあった日本代表はどう変わるのか。とりあえず雰囲気は変わる。新鮮なムードになる。西野監督は日本語で直接伝えられるから、時間がない中、その点は好材料だろう。

 選手選考について、本来新監督というのは選手の評価をフラットに戻し、自分の色を出すために変えるはずだ。ただ、今の日本は誰が指揮しても変えるのは難しい。選手層の厚さがないから。特に攻撃陣にね。

 長谷部がテレビ番組の取材に答えて「8年前の状況と似ている」と話した。10年ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会の前も不安材料ばかりが取りざたされたが、本番直前に川島や本田の抜てき、長谷部の主将指名など“ショック療法”もあり、1次リーグを突破した。本当に似ているかな? 今は当時の3人のような起爆剤になる若手がいるか? むしろ、その3人や長友を超える選手が8年間出てないというのが現実ではないか?

 長谷部は「2~3週間あれば間に合う」とも言う。日本の主将はまるで学級委員長みたいだ。今のブラジル代表では主将は試合ごとに代えている。各クラブの主将級の集団だし、主将=コイントスをする人という程度の感覚だ。

 そもそも代表チームというのはクラブと違って、メンバー発表があってから発足し、大会が終わったら解散する。その繰り返し。それを次も選ばれる前提なのか「この反省を生かして、次は頑張ります」と言う選手が日本には多い。長谷部や本田がそうだ。勘違いしちゃいけない。メッシやロナルドならいいが、今の日本選手には「次も選ばれたら」と前置きするくらいの気持ちが大事だ。

 日本代表カレンダーというのがあるが、これも不思議だ。今後のメンバー選考は分からないのに、まるで固定メンバーがいるかのような錯覚を与える。こうした製品があるのは日本くらい。「○○ジャパン」と監督の名前をはめ込む呼び方と同じく、代表チームをクラブ化し、マンネリ化させている。

 連日、エンゼルス大谷選手の話題が日本中をにぎわせている。一方で日本サッカー界にはスターがいない。スターとは結果を出す人。そういう選手がいなくて、W杯の試合に勝つことは難しい。今回の人事が「監督を代えれば、チームも変わる」という発想なら、根拠がなさ過ぎる。(日刊スポーツ評論家)