先制点の取り方が明暗を分けた。笛は鳴ってないのにイランが足を止めて抗議するという、とんでもない“珍プレー”のおかげでゴールが生まれた。

相手は精神的ダメージが大きく、冷静さを失った。逆に前半21分にGK権田のまずいパスから相手のエースFWアズムンに決定的な場面をつくられ、権田が左足でなんとかはじいたが、あそこで先取点を奪われていたら、流れは違っただろう。

日本はイランをまるでワールドカップ(W杯)で対戦する相手のようにリスペクトし、ひたむきに戦った。1次リーグやベトナム戦では対照的に勝ちにいって攻めあぐね、この日のイランのようにイライラしていた。だから「準決勝はいい試合をした」ではなく、「準々決勝まではこれができなかった」と考えた方がいい。いい試合をして、それまでの悪い試合を忘れるのは危ない。勝った時こそ反省が必要だ。

冨安はアズムン相手に頑張ったが、フィジカルが強いから放り込まれる球には対応できても、ベトナム戦のようにドリブルでこられると弱かった。南野のパスが転んだ相手の手に当たってPKになったのは幸運。仮に当たらずにパスが通っていても、そこには誰もいなかったじゃない?

大迫がヒーローになっていては世代交代を印象づけられない。南野や堂安が決めなくては…。「点に絡む」のと「得点する」のは大きく違う。“演出的”にはPKは堂安に蹴らせてもよかったと思うくらいだ。

イランをこういう形で破ったのだから、決勝の相手もかなり研究し、警戒してくるはずだ。もちろん決勝はどんな形でも勝利=優勝という結果を出すことが先決。準優勝もベスト4もベスト8も同じだよ。そして大会後にはじっくりと内容を分析してほしい。(日刊スポーツ評論家)