福山雅治似とも言われるJ1仙台の渡辺晋監督(41)の表情がその時、学生時代を懐かしむような顔になった。

 仙台は今月23、24日と静岡・清水市内にあるトレーニングセンター「J-STEP」で練習を行った。22日ナビスコ杯清水戦、25日リーグ松本戦と続くアウェー連戦の中2日間、仙台には戻らず同施設で調整した。

 「なつかしいな。ここがスタートだったんだよ」。思い出話は、練習後のそんなひと言から始まった。渡辺監督にとって、この施設は指揮官出発の地。S級ライセンス取得のため、一昨年の8月末から11月にかけて泊まり込みで滞在した。

 「大学生と40代のおじさんが、実戦形式で実技したりするんだからね。それは大変だったよ」。実際、自身も肉離れを起こすほどハードだったというが「お金と時間を使っているから、簡単に落ちるわけにはいかなかった」と必死で食い下がったという。

 宿舎では、“受験仲間”と毎夜のように酒を酌み交わしながらサッカー談議。現J2大宮の渋谷洋樹監督、東京Vの冨樫剛一監督、U-16代表の森山佳郎監督らがその時の同期だ。ハイレベル過ぎて、話の中身を想像するのも怖くなるほどの、そうそうたる顔ぶれである。

 結果、渡辺監督は一発合格を果たし、理事会での承認も翌年2月と一番乗りでS級ライセンス取得。そのわずか2カ月後の4月9日に、当時仙台の指揮を執っていたグラハム・アーノルド氏の後を引き継いで監督に就任した。J-STEP滞在中、そんなトントン拍子の指揮官生活の原点を、心から懐かしんでいる様子がうかがえた。

 イケメンゆえの宿命? か、一見冷たい人に見られそうだが、気さくで選手誰からも慕われる「ナベさん」。昔話の最後には、しっかりと今後を見据え「どんな相手でも謙虚に、粘り強く戦い、勝ち点3を積み上げていきたいね」。月に7試合を戦う4、5月のハード日程のまっただ中。思い出の地でリフレッシュした渡辺監督の、今後のタクトに期待したい。


 ◆成田光季(なりた・みつき)1989年(平元)5月6日、東京都練馬区生まれ。5歳から始めた体操競技歴は15年。中学、高校時代に日本一を5回経験。明大から12年に日刊スポーツ入社。整理部1年半を経て、東北のアマチュアスポーツを中心に取材。15年から仙台担当。