昨季山形J1昇格の立役者となったGK山岸は「山の神」と呼ばれたが、今季残留を目指すチームに今度は頼もしい「山の仏様」が現れた。額のほくろも神々しい、DF瀬川和樹(25)だ。

 5月から東北総局に赴任し、モンテディオ担当となって1カ月。毎日のように仙台から山形に通い、試合、練習を見続けてきた。感じたのは石崎監督の性格も影響しているのか、とにかく明るいチームということ。そしてレギュラーも、試合出場を目指す選手もみんな一生懸命。その中でも、いつも居残り練習を続け、グラウンドを一番遅く引き上げる印象があるのが瀬川だった。

 シーズン序盤は出番に恵まれなかったが、27日のナビスコ杯アウェー仙台戦で初先発を果たすと、2点に絡む活躍で、今季2度目の東北ダービーの勝利に貢献。ここにきて一気に地元サポーターらの注目を集める存在となっている。

 縦への推進力が評価されて群馬から今季山形に移籍。178センチ68キロの体で左サイドをゴリゴリと駆け上がるガテン系のウイングバックだが、もう一つの特徴が、浅黒く日焼けした額の真ん中にある1センチ強のほくろだ。移籍後、石崎監督らからこの「ほくろ」をターゲットにされ、いじられキャラとして定着。ピッチでの定位置確保には失敗したが、腐らずに居残り練習を続けてきた成果を、公式戦デビューの舞台でいきなり披露した。

 仙台戦前日、瀬川に試合への意気込みなどを聞いていく中で、トレードマークのほくろについても質問してみた。

 瀬川 みんなはセグーと呼びますが、石崎監督からは、なぜか「ほぐろ」と呼ばれています。最初はいじられたんですけど、最近はだんだん面白くなくなってきたのか、いじりが減ってきましたね(笑い)。試合では、プレーとほくろの両方でアピールしたい。

 嫌がることなく、丁寧に答えてくれた。まさに普段は見た目同様、仏様のような謙虚な男だが、勢いをつけるためにも「山形の黒い弾丸」と命名して記事にした。その通りのプレーは、いつも黙々と練習を続ける姿を見てきた担当としても頼もしく感じたものだ。

 仙台戦の活躍を受け、30日のリーグ第14節名古屋戦では出場こそなかったが、リーグ戦初のメンバー入りを果たした。運動量抜群のDFボムヨン、「アジアの大砲」高木琢也氏を父に持つルーキーDF高木利らとの、左サイドのレギュラー争いはますます激しくなっていく。「攻撃に関しては手応えしかない。(課題の守備面で)どんどんやっていければ」と瀬川。J1昇格初年度、苦しい戦いが続いている山形だが、昨年の山岸に続く、新たな救世主となることを期待している。【高橋洋平】


 ◆高橋洋平(たかはし・ようへい)1981年8月3日、京都市生まれの札幌市育ち。04年に日刊スポーツ新聞社入社後は整理部2年半、販売局8年半を経て15年5月から東北総局。183センチ88キロの体格ながら、中学は放送部、高校は将棋部、大学は新聞部で文化系一筋。