<アジア杯:日本2-1シリア>◇14日◇1次リーグ◇B組◇カタール

 日本代表MF本田圭佑(24=CSKAモスクワ)が「黒子」と化して日本を進化させ、アジア制覇へと導く。日本(FIFAランク29位)は13日(日本時間14日未明)、アジア杯1次リーグでシリア(同110位)と対戦し、2-1で勝利してB組首位に立った。本田圭は後半37分にPKを決め、日本の国際Aマッチ1000得点目のメモリアル弾で勝利に貢献した。試合中には自ら「黒子」となり香川、松井らのスペースをつくる巧みな動きでけん引。GK川島永嗣(27=リールス)が微妙な判定で退場になる苦境をエースが救った。

 金髪のエースが歓喜の叫びを響かせた。1-1で迎えた後半37分、FW岡崎が倒されて得たPK。俺が蹴る-。その意志を表すかのようにボールを手放さなかった本田圭は、左足で豪快にゴール正面に決勝点を蹴りこんだ。「元祖もっている男」の一撃は、日本の国際Aマッチ1000得点目というメモリアル弾となり、苦闘を続けるザックジャパンを勝利に導いた。

 本田圭

 (PKの場面は)ちょっと危なかったけど入ったのでよかった。結果オーライです。蹴るのはヤットさん(遠藤)か僕かと思ったけど、ヤットさんは遠かったので1本目(のPK)はね。次はヤットさんに譲るんじゃないかな。

 9日のヨルダン戦でまさかのドロー発進となったチームの中で、強気を貫いてきた男はホッとしたような表情で振り返った。

 この日の一戦も厳しい戦いだった。前半35分にMF長谷部のゴールで先制したものの、後半27分に副審がオフサイドと判定したプレーを主審が続行させ、ペナルティーエリア内で相手選手と接触したGK川島が「ゴール機会阻止」による一発退場に。PKを決められ、数的不利な状況で同点に追いつかれた。そんな苦境下で、本田圭がPKの一振りでチームを救ってみせた。

 「前線のポジションチェンジを増やしていきたい」。ヨルダン戦翌日の10日に話していた言葉を体現した。序盤から前後左右に幅広く動き、空いたトップ下のポジションに香川や松井が飛び込むことで、攻撃面で流動的な連係がつくられた。前半35分の先制点も、本田圭が右サイドに流れ、空いた中央のスペースに走り込んだ香川にパスを通したことがきっかけとなったもの。数的不利となった終盤は南アフリカW杯のように1トップに入り、強じんなフィジカルを生かし起点となり、岡崎が走り込む裏のスペースをつくり出した。

 一見すると目立たない「黒子」のスペースをつくる動きが、ザッケローニ監督が話す「プレースピードのアップ」につながった。本田圭がつくったスペースに鋭く周囲の選手が走り込み、好機を演出した。17日のサウジアラビア戦、さらにはその後の決勝トーナメントを見すえると、本田圭の「黒子の動き」がザックジャパン進化の鍵となる。

 シリア戦は試合中に接触プレーで唇を切り流血。左足首も捻挫し、14日の練習を回避して宿舎で療養に努めた。「次も勝たないと。シリア、ヨルダンよりサウジの方が強い。接戦になっても競り勝ちたい。ありきたりだけど、チーム一丸になって勝ちたい」。力強く言い切った本田圭が光となり陰となり、日本をアジア制覇へと導いていく。【菅家大輔】