<アジア杯:日本5-0サウジアラビア>◇17日◇1次リーグ◇B組◇カタール

 日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督(57)が、エース本田圭佑(24=CSKAモスクワ)を温存し、サウジアラビアに5-0と快勝し、日本を準々決勝に導いた。MF松井大輔(29=グルノーブル)の離脱が決定した直後だったが、左足首を捻挫した本田圭まで休ませる、先を見据えた大胆采配が光った。チーム力が高まり、休養十分なエースが戻るカタール戦(21日)も、同監督の手腕に注目だ。

 決勝ゴールのように喜んだ。前半8分、岡崎の先制弾が決まると、ザッケローニ監督はありったけの力を両拳に込めて何度もガッツポーズを作った。相手のネットが揺れるたびに、ポーズはだんだん地味になる。5点目の時は両手を2、3度たたくだけで、視線をピッチから外した。

 先制点を喜んだ理由がある。先を見据え、大きな賭けに出たからだ。チームの軸を担う本田圭がシリア戦で左足首を捻挫し、正常な状態ではなかった。懸命なリハビリで、サウジアラビア戦の当日には、本人から「痛みはあるけど、いけます」と確認した。しかし同監督は即答せず悩んだ。負ければ、1次リーグ敗退の可能性もあった一戦だが結局、就任後4試合すべてに先発出場させた大黒柱を外した。自分の決断で屋台骨を外した戦いを選んだだけに、幸先よいスタートは、何よりうれしかった。

 常に先を見据えている。右太もも肉離れの松井からは「最後まで残ってみんなを盛り上げたい」と直訴されたが「この大会で日本のサッカーが終わるわけではない。君の力を必要とされる時が来るから今は無理するな」と、7月の南米選手権、9月から始まるW杯ブラジル大会予選に向け、帰国させた。代わりに出場した岡崎が3点を決めるなど、采配は的中した。

 ザッケローニ監督

 まずは第1関門を突破した。それも1戦目より2戦目、2戦目より3戦目と、成長してくれた。選手はチャレンジしてくれたし、点を取ってからもプレーを続けてくれた。今は成長を続ける段階。私はポジティブな人間だし、カタール戦もいい戦いで成長できると思っています。

 DF内田が警告累積で次戦出場停止が決まるとちゅうちょなく伊野波を送った。センターバック岩政も試した。GK西川も無失点に抑えた。成長するチームは、ザックのしたたかな計算、客観的な判断によるものだ。

 イタリアのクラブでしか指導経験のない同監督は、日本協会の代表監督要請を引き受けたことを「冒険」と表現する。冒険の先には新たな発見がある。ザッケローニ監督に導かれ、まずはアジア杯奪取、W杯での大躍進を目指し、成長を続ける。【盧載鎭】