【シンガポール11日】日本代表のDF長友佑都(29=インテルミラノ)が“厚い壁”を切り崩す。今日12日のW杯アジア2次予選シンガポール戦(アウェー)に向け、この日は試合会場で非公開調整。6月の対戦で0-0で引き分けた相手は、再びゴール前を固めてくることが予想される。所属クラブで一時は戦力外扱いを受けた男が、サイドから攻撃の糸口を生み出す。

 試合会場は開閉式の屋根が閉まり、蒸し風呂のような暑さになった。冒頭15分間だけ公開されたシンガポール戦に向けた最終調整。長友は小刻みなステップを踏みながら、体をほぐしていった。その横からハリルホジッチ監督の熱い視線を受ける。2次予選E組2位の日本は、勝てばシリアを抜いて首位に浮上する。赤道直下の常夏の国。体力の消耗が激しい環境で、長友のサイドからの崩しが日本勝利のカギを握る。

 「タイミング良く(前線に)上がっていく場面を増やしたい。幅を出すことによって、中央にスペースができると思うんでね。サイドは非常に重要になる。(6月の)ホームでは、中を固められて、難しい試合になった。(攻守の)バランスを取りながら(自分が)勝負できるかだと思う」

 好調を取り戻した。所属のインテルミラノで、今夏に事実上の戦力外扱いを受けた。欧州の夏の移籍市場ギリギリまで新たな居場所を探したが、最終的に条件面で折り合わずに残留。飼い殺しになることさえ覚悟した。だが、そこから意地を見せた。10月24日パレルモ戦から、最近のリーグ4戦のうち3戦で先発フル出場。戦力外から一転して、再びレギュラーの座を取り戻した。自信と信頼をつかみ合流した代表で、この勢いをつなげたい。

 「まだ(最近の先発は)3試合だけなんでね。次の試合に出なければ、また同じような境遇になるかも知れない。その辺は危機感を持たないといけない。(インテルの)サイドバックは7人くらいいますから」

 悔しさを胸に爆発する。アギーレ前監督が率いた昨年10月14日、日本はここシンガポールでブラジル代表と親善試合を行った。W杯で惨敗し、立ち直るためにはどうしても出たい一戦だったが、長友はまさかの出番なし。今回は同じ会場で、格下シンガポールとの対戦になる。相手の力は雲泥の差があるが、再出発には負けられない。

 「モチベーションは変わらないです。しっかりと戦う」

 復活した長友が、日本を勝利に導く。【益子浩一】

 ◆今季の長友 所属するインテルミラノは今夏の移籍市場で、期限付き移籍でニューカッスルからイタリア代表DFサントンが復帰。7月にバルセロナからスペイン人DFモントヤと、2人のサイドバック(SB)を早々に補強。押し出される形となり、マンチーニ監督から戦力外扱いを受け、ガラタサライ(トルコ)など多くのクラブへの移籍報道が出た。

 結局は残留したものの、開幕から8試合で出場は途中出場の10分のみだった。10月24日のパレルモ戦で今季初先発。右SBでフル出場して評価を上げると、同31日のローマ戦(1-0で勝利)に左SBとしてフル出場し、FWジルビーニョらを完封。11月8日のトリノ戦(1-0で勝利)にも右MFでフル出場して後半途中からはキャプテンマークも巻いた。今季12試合中4試合(3試合でフル出場)に出場。