日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(63)が日刊スポーツなどのインタビューに応じた。

 昨年3月に就任しW杯アジア2次予選は5勝1分けでE組首位に立つ。事あるごとに日本サッカーに物申す強烈なキャラクターで存在感を示す指揮官が大いに語った。

 元日付紙面では掲載しきれなかった部分も含め、新春ロングインタビューとしてお届けする。【取材、構成=八反誠】

 ◆サッカーと文化は切っても切れない。日本そのものについて考えると、日本サッカーが見えてくることもある。少しサッカーを離れた話も聞いてみる。質問は「日本で暮らし、日本人と触れ合い、感じたことは」

 「(自宅のある)フランスで日本がどう評価されているか話しましょう。規律があり、勤勉で、人々を尊敬する。それが日本人の評価です。少し恥ずかしがり屋だとも思われていますが。

 私も実際に、それをそのまま実感できました。日本の伝統文化、長い歴史などについて書かれた本も読みました。仕事をする面で、本当に素晴らしい国だと思います。

 ただ、スポーツ、フットボールでは何かを変えなけばいけないと思います。相手をリスペクト(尊重)し過ぎる面がある。私は違う。まず自分自身をリスペクトした上で、相手をリスペクトする。それが勇気、勇敢さにつながる。特にアグレッシブにいく時には、大事になってくる。

 何も、けんかをするアグレッシブさではなく、試合の中でデュエル(球際の争い)に勝つアグレッシブさです。前に『デュエルとは何ですか?』と質問を受けたことがあります。ヨーロッパでそんな質問をしたら笑われます。デュエルに勝つことが、試合の勝ちにつながる。誰もがそれを知っているからです。日本にはまだ、そういったカルチャーがないのかもしれない。そういった面を、少しずつ変えていきたい。

 ただ、これはフットボールの面においての話です。プライベートでは教育も素晴らしいですし、日本人の気質はずっと残しておいてほしいと思います。欧州とはまた違った社会が、日本にはあると思います。たくさんの面で。

 例えば食事です。日本に来る前は少し不安だったんですが、まったく逆でした。日本の料理は素晴らしい。すべてを好きというわけじゃないですが(苦笑い)。生魚が苦手です」

 ◆日本人的な良さが、サッカーになると弱点となるとも主張する。「イニシアチブ(主導権)」「イマジネーション(想像力)」という単語を使い、持論を述べ続ける。

 「この日本の社会は本当に素晴らしくオーガナイズ(組織)されている。ただ、素晴らしいが、少しオーガナイズされ過ぎているところがある。生活面で、個人でイニシアチブを取る人が少ない。イマジネーションを持って生活できていない。それが残念ながらゲームに出てしまっている。

 試合中に私から100の指示を与えることはできない。選手がイマジネーションを持って自らイニシアチブを取ることが必要。例えばコンビネーションも100以上あるが、全部を伝えることはできない。

 私は選手の時、自らイニシアチブを取っていた。FWですから、自分の考えを出さないといけなかった。そういったイニシアチブ、日本語でどう言うか難しいですが、イニシアチブを取ることが得意ではない。それが私の分析です。

 あえて自分からするという習慣がないのかなとも思います。本当は選手に自由を与えたい。与えたいが、本当に彼らと過ごす時間が短い。全部を伝え切れていないのが現状です。

 守備面のオーガナイズは素晴らしい。ここは日本の気質が生きていると思います。言われたことをしっかりやるという部分です。ただ、オフェンス面では指示通りだけではないところも必要になる。例えばダイアゴナル(斜め)にサイドチェンジしろという指示はもちろんしますが、ピッチ上でそれ以外の相手を驚かすようなプレーも、自分から生み出す必要がある。

 例えばバルセロナはどうでしょう。もし組織でうまくいかなければネイマールやメッシが自分の判断で突破を図ります」

 ◆ハリルの日本論、日本人論も行き着く先はやはりフットボール。最後にはお気に入りで、自身もクラブW杯で視察したバルセロナの例が出た。ここもらしさ満載。総じて、日本を気に入っているようだ。(続く)