持ち味を発揮していた日本代表MF柏木陽介(28)の途中交代を、相手選手までもが惜しんだ。

 試合終了後。ボスニア・ヘルツェゴビナ代表の主将にして背番号10、MFメドゥニャニンが柏木の肩をたたいた。「いいプレーだったよ。でも、なぜ交代したの? ケガでもしたのか? 疲れたのか?」。

 そういった特別な理由はないと伝えると、首をすくめるようにして疑念を示した。柏木は「どこの国のリーグでやっているのかとかも確認された。相手の中心選手にそう言ってもらえたのは悪くない」と話した。

 「今日はすごくよかったと思う。攻撃のリズムをつくれていた」と柏木。ブロックをつくって守備を固める相手の選手間を縫うように動き、長短のダイレクトパス、サイドチェンジを駆使して攻撃を組み立てた。

 加えてこの日は前線やサイドにパスを送るだけではなく、すぐにスプリント走でゴール前にも顔を出した。前半12分、FW宇佐美の左からのシュートの場面では、こぼれ球を押し込むべくGKの鼻先まで詰めていた。

 同25分、FW浅野のヘディングシュートの場面でも、柏木はゴール前に詰めていた。こぼれ球に反応し、左足ボレーシュート。身体を投げ出したDFに阻まれたが、もう少しで代表初得点というシーンを何度もつくった。

 「ブルガリア戦ではゴール前に入れなかったのが反省点だったけど、今日は何度も入れた。他のプレーも含めてミスもなかった。監督の評価は分からないけど、個人的にはよかったと思っている」

 後半開始時にMF遠藤と交代したが、ハリルホジッチ監督は大柄な選手をそろえるボスニア・ヘルツェゴビナ対策の戦術的な交代であったことを示唆した。

 柏木も「うまさ、フィジカルの強さを感じた。まともにぶつかっていくのは、今は難しい」と認める。

 一方で「ボール持った時の自分の特長である、周囲をつかってパスでリズムをつくるというプレーは、終始できていた」と振り返った。

 「日本人のボランチの中では、これができるのは自分しかいないと感じた。そういう自信をもって、チョンチョンとパスをつなぎながら、機を見て相手の裏をパスで狙っていければ」

 守備に関しても「前に向かって圧力をかけるのはできていた」とうなずく。「大きな相手に裏に走られた時や、ガチャンとぶつかりあった時に、もう少し対処できるようになれれば。Jリーグでも、外国人選手とのマッチアップで意識をしていきたい」とさらなる向上へ意欲をみせた。

 3日ブルガリア戦に続く先発出場。視野の広さやキックの種類、精度を生かし、ダイレクトパスで攻撃のテンポをつくる持ち味を存分に発揮した。

 「この2試合、いい経験をさせてもらった。準優勝という結果は残念だったけど、代表での自分の立ち位置、今後やるべきことは確認できた」

 すでに肉体改造には着手している。持ち味の攻撃面をさらに磨きつつ、プレーの幅を広げる。代表でも不動の地位を築くべく、柏木が高みを目指す。