なでしこジャパンMF沢穂希(32=INAC)が、女子W杯ドイツ大会MVP候補に選出された。国際サッカー連盟が14日(日本時間15日)、発表した。今大会トップタイの4得点、ボランチとして相手攻撃も封じるなど攻守両面での貢献度から、現時点で受賞に最も近い1人。沢の読売ベレーザ(現日テレ)時代の恩師・竹本一彦氏(55=現柏強化本部シニアマネジャー)は世界一のボランチに成長した愛弟子を「クイーン沢」と形容し、金メダル獲得を願った。米国との決勝は17日(同18日)に行われる。

 沢が最高峰の栄誉をつかもうとしている。この日発表された今大会MVP候補12人の中に、「沢穂希」の名前は当然のように記されていた。世界最多タイの5大会連続出場に加え、1次リーグのメキシコ戦では大会最高齢でハットトリックを達成し、釜本邦茂氏の日本代表得点記録を一気に更新。準決勝スウェーデン戦でも決勝ゴールを決めた。大会4得点は現在ランクトップで、個人タイトル2冠の可能性も高くなった。

 中学校入学と同時に沢をプロの道へと導いた竹本氏も、決勝進出の最大の功労者を「クイーン沢」の称号で評価した。

 竹本氏

 女子サッカー界の世界的な顔。キングカズじゃないけど、クイーン沢。象徴的存在だよね。中田英もそうだけどFIFAの人も、欧米でも知らない人はいない。プレーはもちろん、日本の女子サッカーの歴史そのもの。外交官役も担ってもらわないと。

 「ストライカーは天からの贈り物」。日本サッカーの父クラマー氏(東京五輪日本代表コーチ)の言葉を借りて、希代のボランチ沢のプレーを表現した。

 竹本氏

 ストライカーは育てることはできない天性のもの。女子サッカー界に神様が授けてくれた。一番すごいのはボランチでありながら点を取るところ。男子日本代表の遠藤にしてもゴールゲッターではない。運動量、ボール奪取、パスにおさまらず、ゴールゲッターの能力を失っていないところに輝きがある。他にはまねできない新しいボランチ像。決勝でも点とるんじゃない?

 沢と竹本氏の出会いは91年。読売ベレーザ監督として、男子の中で得点を重ねていた沢に魅せられ、入団させた。通常の中学生は下部組織のメニーナからのスタートだが、いきなりの抜てき。主力だったFW高倉麻子、MF野田朱美らと競わせることで原石に磨きをかけた。

 竹本氏

 その時は正直、W杯決勝の舞台に立つなんて思ってもいなかった。当時は女子の世界大会すらなかったし。まずは日本一になること。そして代表としてアジア制覇。五輪、W杯に出たいに変わり、そこで勝ちたいと思えるようになってきたのは、02年の男子W杯と並行して協会が支援してくれるようになった頃かもしれない。

 その歴史の過程にはすべて沢がいた。さらなる成長の糧となった99年米国移籍の背中を押したのも、竹本氏だ。

 竹本氏

 環境を変えることで経験値も人脈も広がった。その国とファイナルで戦えるなんて歴史のいたずらを感じますね。

 穂希の名前は、父靖邦さん(63)が、米が不作だった年に豊作を願ってつけた。その娘が世界最高の舞台で、大輪のなでしこを咲かせるときが近づいてきた。【鎌田直秀】