日本代表のMF本田圭佑(26=CSKAモスクワ)が、成熟した姿を見せる。今日15日の親善試合ベネズエラ戦(札幌)に向け14日に帰国し、1日遅れで代表に合流した。08年北京五輪後に金髪にして以降、4年間トレードマークにしていた頭髪を一新。無名だった時代の黒髪、自我を主張しながら得点にこだわって成り上がった本田の象徴ともいえる金髪を織り交ぜた新スタイルで現れた。新旧融合した新しい姿を、ピッチ上でも見せつける。

 緑色のピッチと「金&黒」のコントラスト。札幌ドームの照明から放たれる光を受け、新しいヘアスタイルの本田が映えた。冒頭15分だけ公開された最終調整。モスクワから成田を経由し、北の大地まで長距離移動してきた疲労感は見せなかった。刈り上げた側頭部は黒、頭頂部を金にした頭はモヒカンのようにも見える。新たな“スタイル”はただのファッションではない。本田流のメッセージが込められているのだろう。

 無名だった時代の黒髪と、成り上がりの象徴ともいえる金髪-。

 ちょうど4年前。それまでこだわっていた黒髪から金髪に変えたのは、3戦全敗で終えた北京五輪後だった。同じ時期、半年前に加入したVVV(オランダ)が2部リーグに降格。五輪で世界に通用せず、欧州での挑戦も挫折した。当時、本田が描いた理想像はパス主体のゲームメーカーになること。それも通用せず、不遇の時を迎えていた。自分と向き合い、出た結論。生まれ変わりたい-。その思いから金髪にした。同時に、憎らしいほど自我を主張しながら得点にこだわるプレースタイルに変えた。

 この日は試合前日のため、いつものように練習後は無言を貫いた。それでも朝に帰国した成田空港では、ロンドン五輪についてこう語っている。

 「今回は四十何年ぶりの…というのが多い興味深い大会だった。情報はネットとかで常にチェックはしていました」

 男女ともに4強入りした日本の快進撃に、4年前の屈辱がよみがえったのかも知れない。

 どん底の北京から丸4年-。26歳になった今、本田には新たな理想像がある。4年かけて磨いてきた得点力と、北京五輪以前に思い描いていた司令塔としてのパサーの融合。ザッケローニ監督は一貫して、トップ下を香川ではなく本田に任せている。今日15日のベネズエラ戦もトップ下での先発が濃厚。点を取るだけでなく、周囲を生かすことも必要になる。

 それはくしくも「金と黒」の融合と同じだ。6月に背番号を「18」から守備的なイメージの濃い「4」に変えたのも「点の取れる4番もいることを世界に見せたい」という思いから。今回の髪形も、自らへの強い決意、周囲への強いメッセージになる。ベネズエラ戦は、ぶっつけ本番になるが、それでも言い訳はない。

 「強行日程なのは僕だけではない。弱音を吐くことは許されない」

 不遇の時を超えるため、ターニングポイントとして金髪にしたのが08年-。それから4年。日本の中心には、これまでとは違った成熟した本田がいる。【益子浩一】

 ◆モヒカン刈り

 1970年代のパンク・ファッションの中で流行し、80年代にバリエーションが増えた。日本で有名になったのは、2002年W杯日韓大会で、イングランド代表のベッカムがしていたソフトモヒカン。若者の間で人気を博し、日本代表DF内田も中学時代にソフトモヒカンにしていた時期があった。一般的にインディアンが狩猟で弓を射る時に、髪の毛が邪魔にならないよう、両サイドを短く剃り上げていたのが由来とされる。