<W杯アジア最終予選:日本1-0イラク>◇B組◇11日◇埼玉

 もっとゴールが取れるはずだ!

 日本代表MF本田圭佑(26=CSKAモスクワ)がアルベルト・ザッケローニ監督(59)にカツを入れられた。FIFAランク23位の日本は同78位でジーコ監督率いるイラクを撃破。FW香川真司(23)が腰痛で急きょ欠場する中、W杯最終予選B組で3勝1分けの勝ち点10の首位ターンを決めた。だが試合終了直後、本田がザッケローニ監督から「もっとゴールを取れ」と叱咤(しった)された。単なる勝利では満足しないエースは指揮官に指摘された得点力不足を課題とし、さらなる成長を誓った。

 勝利を告げる笛が鳴り響くと同時に、あいさつの列から1人離れ、ベンチへと歩みを進める背番号4の姿があった。無得点という事実への不満もあったのだろう。ザッケローニ監督に握手を求められ、身ぶり手ぶりで言葉をかわすと、気持ちを取り戻したかのようにあいさつの列に加わった。

 本田

 監督からは、もっとゴールを取れたというところが満足いってないと。普段から「もっとゴールを取れる」と言われているので。「もっと取れ」と言ってくれる人が少ないので監督は貴重な存在。僕に対して満足してるそぶりは見せないので、いい傾向と思う。お互い片言の英語で。コミュニケーションがしっかり取れないくらいがちょうどいい。期待に応えたい。

 勝利の余韻に浸る間もなく、指揮官からカツを入れられた現実を楽しむかのように振り返った。何より日本をW杯優勝に導くために、自分のゴールが必要不可欠だと分かっているから。「勝てたことが一番の収穫。個人的には決定力不足を露呈した試合だった。決めるか決められないかは少しの差。ビッグゲームになるとそこが命取りになる」。自らを律するように話した。

 「2枚看板」の1枚、香川が腰痛のため急きょベンチ外となり、序盤はイラクのマンマークにてこずった。ただ、1点リードの後半に入ると、どう猛にゴールを狙う姿が如実に表れた。前半0本のシュートは後半5本。後半24分にはDF長友のクロスを頭で合わせたがゴールの上。同35分にはMF清武のクロスをDFの死角で受けて頭で合わせたがGKの好守で阻まれた。「監督には消える(死角に入る)動きは何度かできたと話したけど、監督からしたらそんなのどっちでもいいという感じでしょう」。ゴールを決めなければ意味がない-。ザッケローニ監督からのメッセージが脳裏に刻まれていた。

 香川抜き、DF今野、内田が出場停止という苦境の中で、日本はジーコ・イラクから奪った貴重な勝ち点3でW杯最終予選を首位ターン。W杯出場へさらに前進した。ただ、エースはまだまだ満足などしない。目標が高いからこそ、こんなところで止まっているわけにはいかない。

 本田

 どこかの名ストライカーが言っていたけど、ゴールはケチャップだと。出ない時は出ないけど、出る時はどばどば出る。どうやって改善されるかと言ったらシンプルで、続けていくだけ。前を向いてロシアに戻ってクオリティーを高めていきたい。

 体調は万全ではなかった。ロシアでの過密日程もあり、8月30日の欧州リーグ最終予選AIK戦前日にはコンディションへの不安からピッチでの練習を取りやめたほど。そんな状態でも不安を顔にも出さず、口にもせずに戦い抜き、かつ得点力不足を世界を取るための課題とした。本田の上昇志向が日本をさらなる高みに引き上げる。【菅家大輔】

 ◆ゴールはケチャップ

 09-10年シーズン序盤、RマドリードのFWイグアインが絶不調に陥っていた時、当時の同僚でオランダ代表の名FWファンニステルロイから「ゴールっていうのはケチャップみたいなもの。いくら頑張っても出ないと思ったら、一気に出たりする。ゴールはそういうもの」と助言を受けたという。その後、イグアインは復調してゴールラッシュ。リーグ2位の27得点を挙げる活躍をみせた。