<U-17W杯:日本3-1ベネズエラ>◇1次リーグD組◇21日◇シャルジャ

 若き日本代表が南米予選2位突破のベネズエラに快勝し、2連勝で2大会連続の決勝トーナメント進出を決めた。18日の初戦ロシア戦(1-0)から先発を8人変更しながら、素早いパスワークからFW杉本太郎(17=帝京大可児高)、FW渡辺凌磨(17=前橋育英高)がゴールした。GKを除くフィールドプレーヤー18人の平均身長は169・2センチという小兵軍団。エース不在を逆手に、個人に頼らぬ組織力を武器とし、日本史上最高の8強越え、そして決勝進出を狙う。

 ヤングジャパンが世界を驚かせるパスサッカーで、あっさり16強入りを射止めた。鹿島入団が決まっている杉本がまずは魅せた。前半7分、右クロスをFW渡辺が触ったところに詰めて、右足で先制点を奪取。1-1で迎えた同44分には再び素早いパスワークから、渡辺が決勝点を挙げた。

 初戦の欧州王者ロシアに続き、ブラジルを上回る南米2位通過のベネズエラからも勝ち点3をつかみ取った。それでも「ファイナリスト(決勝進出)」を合言葉にするチームに慢心はなく、吉武監督は「たくさんチャンスはつくったが、最後の精度に課題は残った」と冷静に分析した。

 ロシア戦から先発を8人も変更。公式戦では異例の采配だが、チームは躍動し、ボール試合率はロシア戦を上回る68%。巧みなパスワークに、シュート数23本というゴールへの意欲も加わった。外国メディアからも「洗練されてセンセーショナル」と驚きの声が上がったほどだった。

 「日本流」を突き詰めた吉武サッカーの真骨頂だった。メンバーには160センチ台がずらり。GKを除いた平均身長は169・2センチと、文科省発表の17歳男子の平均身長170・7センチにも及ばない。だが指揮官の「1対1が日本は弱いと言われている。その弱いことをストロングポイントにしたい」という方針で強化。エース不在を逆手に、技術の高い選手が判断の速さを生かす。「相手にぶつからないようにする」(吉武監督)というパス&ムーブを連続させる戦術が浸透し、世界相手にも通用した。

 「この年代は自分の判断、責任で行動するという部分が弱くなっているので、ピッチ上だけでもそれをやってもらいたい」。吉武監督の意向から、選手は自分の判断で相手のスペースを見つけて攻め込む。「ニューローテーション・ポリシー」とチーム内で称される試合中の一時的なポジション交代も特徴だ。この日もボランチとサイドのMFが10分間だけポジションを交代。新鮮な視野でプレーさせることで、選手たちは「ここが空いているということなどが分かる」と言う。

 決勝点をアシストしたMF鈴木ら97年生まれは、20年東京五輪の世代だ。体格面で世界の強豪に劣るというのはA代表でも永遠の課題とされる部分だが、現時点での吉武ジャパンは高い技術、機動力に発想を加えた「日本らしさ」で対抗。パス回しにこだわるだけでなく、シュートへの意欲も忘れない。吉武監督は「前回のベスト8を1つでも越えたい」。未来へつながる、新たな歴史作りに挑む。