日本代表のMF香川真司(24)が、被災地へ復活する姿を届ける。W杯イヤーの初陣となる親善試合ニュージーランド戦(5日、国立)に向けた代表合宿が3日、都内でスタートした。東日本大震災から丸3年になる3・11を前に、得点と勝利を被災地にささげることを約束した。所属のマンチェスターUでは出番が限られているが、苦境を乗り越える自らの姿を、第2の故郷・東北に伝える。

 冷たい風がグラウンドに吹いた。冒頭15分間だけ公開になった合宿初日。香川は練習が始まって10分が過ぎると、手袋を外してピッチの外へそっと置いた。ゆっくり体を温めながら、胸に秘めた思いも高めていった。W杯イヤーの初陣は、本大会メンバー発表前の最後の国際Aマッチでもある。それだけでなく「常に思うことではありますけれど」と自ら切り出し、サッカー留学のために中学、高校と暮らした第2の故郷・東北への思いを漏らした。

 「ゴールと勝利を被災地にささげられたらいいですね。1週間後には、震災から3年になる。W杯イヤーで東北が盛り上がってくれればいいですしね。みんなで(震災を)振り返りながら、いい戦いをしたい」

 苦境からはい上がる姿を届けたい-。マンUでは1月11日のスウォンジー戦に出場して以降、リーグ戦は6戦連続出番なし。今季まだ無得点だ。2月25日の欧州チャンピオンズリーグ、オリンピアコス戦に途中出場したものの、実戦不足は明らか。それでも前向きに、どん底から抜け出そうとしている。

 「こんなに大きい壁というか、こういう経験は、なかなかできない。壁を乗り越えることで、自分の人生も成長する。この壁をポジティブにとらえています。(苦境が)W杯の年にあるのも、何かの縁。これをいい形に変えるためには、いい結果を出すしかない」

 “原点の地”から復活する。代表に選出されたばかりの10代の頃、当時の岡田監督に「ヘディングが弱い」と指摘された。そして、この日練習が行われたのと同じ西が丘で、日が沈むまで居残り特訓をさせられた。ニュージーランド戦の舞台でもある国立競技場は、09年2月4日フィンランド戦で得点を挙げた一方で、翌10年2月14日の東アジア選手権・韓国戦で屈辱も味わった。

 「国立の思い出…。そういえば韓国戦で途中出場途中交代させられましたね」

 これまでの道のりも順調ではなかった。挫折も経験しながら、今がある。

 「4年がたつのは早い。日々、それを感じていますし1日、1日を大切にしてサッカーと向き合わないといけない。時間が過ぎるのはあっという間なんで」

 W杯まで3カ月-。時間は待ってくれない。東北のために、そして自分自身のために。全力で「最後の国立」に臨む。【益子浩一】

 ◆今季の香川

 今季のマンチェスターUの公式戦41戦のうち、半分以下の19試合しか出場していない。そのうちフル出場は6試合。プレミアリーグだけでみるともっと状況は厳しく、27戦で出場9試合。うちフル出場が2試合と、プレー機会が激減。とはいえ与えられたチャンスに結果を残せていないのもまた事実で、今季は公式戦で得点、アシストともにない。