手倉森流とアギーレ流は同じだった!?

 9月開幕の仁川アジア大会(韓国)に出場するU-21(21歳以下)日本代表候補の福岡合宿が12日、2日目を迎え、手倉森誠監督(46)が新システム「4-3-3」を練習した。日本代表のハビエル・アギーレ監督(55)が前日の就任会見で「ベースは4-3-3」と話す前から導入を決めていた布陣。それが偶然にも一致したことで、A代表とリオ世代の連携も効果的に進みそうだ。

 アギーレ新監督の就任会見から一夜明けた福岡で、手倉森監督が新システムを披露した。昨日の今日で「4-3-3」だ。基本はJ1仙台の監督時代から踏襲する「4-4-2」だが、午前午後とも1トップに左右ウイング、インサイドハーフ2枚、アンカー1人の新布陣を試した。細かいポジショニングまでは分からないが、アギーレ氏が「ベース」と明言したシステムと、形の上では一致した。

 この布陣は、今年1月のU-22アジア選手権(オマーン)のオーストラリア戦で、相手のシステム対策として臨時導入したことはあったが、本格的な指導は初めて。手倉森監督は、視察したW杯で優勝したドイツのシステムも参考に構想を温め、3週間ほど前から福岡合宿用に新布陣の計画と指導要領をまとめていた。

 それが前夜、アギーレ氏の会見内容を知り驚いた。「一緒だ…」。A代表のコーチも兼任してイズムをリオ世代に伝える役割も担うが、会う前に考えが一致。「年下の自分から『スタイルが似てますね』とは言いにくいけど、アギーレさんの方から『手倉森とは合いそうだ』と思ってもらえれば。それにしても、アギレる(あきれる?)ほどの偶然だな」と笑い飛ばした。

 さらに、ここからボールを奪う戦術を教え込んだ。「まず守備」と言ったアギーレ氏と、布陣だけでなく優先順位まで同じ。FW野津田にウイングとインサイドハーフを経験させて攻守両面の質を求めたところも、仙台時代からの哲学「全員守備、全員攻撃」も全てがアギーレ流と重なった。

 昨年1月、指導者留学でスペイン1部エスパニョールの練習を見学した際、当時監督のアギーレ氏と話す機会があった。その時は互いに監督就任前。まさか「4-3-3をやりましょう」と申し合わせるはずもない。あれから1年半、手倉森流とアギーレ流は偶然の一致を見た。方向性が同じなら強化も効率的だ。今日13日のJ2福岡との練習試合で、一足先に新生日本の方向性を示す。【木下淳】

 ◆4-3-3とは

 ひとくちに4-3-3といっても、中盤の構成の仕方でシステムが変わってくる。中盤の「3」をフラットに並べる場合、ボランチタイプの選手を3人置くことが多く、より守備的な布陣となる。その場合、後ろの7人で守り、カウンターで前線の3人へボールを預けるような戦い方が多くなる。近年、バルセロナやグアルディオラ監督が加わったBミュンヘン、そしてドイツ代表でも多く用いられるのが、中盤の「3」を、1ボランチ(アンカー)と攻撃的MFの2人に分けるやり方。4-1-2-3とも言われ、2人のMFが攻めに比重を置くため、より攻撃的な布陣となる。中央からの崩しも、最前線「3」の両サイドの選手を使った攻めも、両方に対応できる。