<国際親善試合:日本2-1オーストラリア>◇18日◇ヤンマー

 MF今野泰幸(31=G大阪)が、再起への1発を決めた。W杯ブラジル大会で惨敗、一時は代表引退も頭をよぎった男が、後半開始からW杯後初めてピッチに立った。同5分に相手ボールを奪って香川の決定機を演出すると、最大の見せ場は同16分。ワンバウンドした本田のCKを頭でゴールへ押し込んだ。待望の先制弾だ。

 「あんまりゴールするタイプではないので。チョー適当。ゴール枠に飛べばいいと思ってた」。11年11月11日タジキスタン戦以来、代表通算2点目は新体制での初ゴールだ。

 悪夢から5カ月が過ぎた。W杯決勝トーナメント進出の可能性が残っていた1次リーグのコロンビア戦。今野がPKを献上し日本は1-4で大敗した。ブラジルを離れる日。責任を背負い、目を真っ赤に腫らしながら漏らした。「次の代表は考えられない。もう一生。先に進める気がしない」。心は灰のようになった。

 今合宿でアギーレ監督に初めて呼ばれても素直には喜べなかった。「評価されて呼ばれたから。多少は、うれしい」。実直でうそはつけない性格。思わずこぼした「多少は」という言葉が、晴れることのない胸の内を物語っていた。

 だからこそ日の丸のユニホームを着て、無心にプレーした。アジア杯に向けては「メンバーも決まっていない。僕はJリーグで優勝争いがある」。まだ31歳。老け込む年ではない。どん底からの再起へ。葛藤する心の中に、未来へと続くひと筋の光が見えた。【益子浩一】