【ニューカッスル(オーストラリア)11日】八百長疑惑が渦巻く中、アギーレジャパンが出陣する。アジア杯初戦のパレスチナ戦の前日会見に臨んだ日本代表ハビエル・アギーレ監督(56)は、海外メディアから八百長疑惑についての質問攻めに遭った。連覇への困難な道のりは、八百長疑惑がつきまとうアギーレ監督にとり、進むも地獄退くも地獄の、いばらの道となる。

 海外メディアからの突っ込んだ質問に、アギーレ監督は眉ひとつ動かさずにいなした。ロンドンのテレビ局から「八百長疑惑があるが選手への影響はないか」と質問が飛ぶ。スペイン語だけでなく、英語も理解できる指揮官は、マイクに向かって前のめりになって答えた。「その件については3週間前に会見を開いている。この場ではお答えいたしません」。きっぱりと言い切った。同席した長谷部主将も「そのことでの影響はないと断言できる。このチームの良さはお互いを信頼し合うところ。同じ目標に向かっている。まったく影響はない」。

 だが英国の公共放送局BBCは納得せず「この件でやめるつもりはなかったか」と質問をたたみかけた。さすがのアギーレ監督も「私は北中米ゴールド杯を4回、南米選手権を3回戦っている。いずれの大会でもサッカーの話しかしていない。だから初めてのアジア杯でも一緒だ」と一瞬、声色にいらだちを見せた。だが質問者の方向を見ると冷静になり、口調は戻った。

 前回王者の日本ということもあり、約30分間の前日会見にはテレビカメラ15台、約60人の報道陣が会見場にすし詰め状態。以前、アギーレ監督はアジア杯では他国メディアからも八百長疑惑を聞かれるケースを予期しながら「行ってみないと分からない。ただ私は戦える。アジア杯で優勝したいと思っていることがすべて」と、話していた。

 想定内とはいえ、アジア杯そっちのけで疑惑について好奇の目を向けられ、追及を受けた。会見のラスト5分、質問は疑惑に集中した。国際大会の公式会見としては異常事態だった。質問したくても指名されなかったメディアもおり、会見を打ち切らなければ、さらに質問をたたみかけられた可能性は高い。

 1次リーグの残る2試合、イラク戦、ヨルダン戦でも同様の質問が飛ぶのは避けられない。試合よりも1日早く、指揮官にとっていばらの道が始まった。疑惑の目にさらされながら、負けられない初の公式戦が幕を開ける。【高橋悟史】