【北京27日=鎌田直秀】川崎Fが早くもアウェーの洗礼を受けた。28日のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)1次リーグ最終節・北京国安(中国)戦へ向け会場の北京工人体育場で前日練習を行った。会場には約30人の相手サポーターが押しかけ、中国公安警察の厳戒警備で選手らに危害は及ばなかったが、移動バスに反日感情を表した落書きがされた。決勝トーナメント(T)進出をかけた勝ち点1差で迎えた直接対決に、一触即発のムードが漂った。

 川崎Fの前日練習は、中指を立てて叫ぶ北京サポーターの侮辱行為から幕を開けた。会場に移動バスが到着すると、待っていた約30人の北京サポーターが押し寄せた。約20人の中国公安警察が割って入り、列をなして人のバリケードを築く。無事に選手全員が降車して最悪の事態は避けられたが、決戦を前に会場は異様な緊迫感に包まれた。

 北京サポーターの暴走は、それだけではなかった。選手らが練習中、移動バスに「抗日」「F××K

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 JAPAN」という反日感情をむき出しの大きな落書きがなされた。練習を終えたDF森勇介(29)は「まじかよ」と驚きを隠せなかった。安全を守るため、チーム側はマッチ・コミッショナーに報告した。

 E組は1位の城南一和(韓国)がすでに決勝T進出を決めている。残り1枠をかけて、最終戦で、勝ち点1差の2位北京国安と3位川崎Fが直接対決する。中国では北京国安のみが決勝T進出の可能性を残すとあって、この試合にかける国民の期待は高い。それが殺気だった空気をもたらしている。

 試合前日にはテレビ局が「特別蹴球番組」と題した応援番組を放送。6万3000人収容の会場は、満員の観客が予想されている。この日はダフ屋がチケットを3倍の値段で販売していた。また同国協会も北京国安の調整期間を長く割けるように、直前の国内リーグ戦の日程を1日前倒しした。まさに国を挙げたバックアップ態勢は、川崎Fにとっても大きな脅威になる。

 もっとも過激な中国のサポーターは、川崎Fも経験済み。1-3で敗れた昨年5月のACL・天津泰達戦では、試合中からグラウンドに物を投げ入れられ、バスを包囲された。今回は日本から警備を帯同するなど警戒を強めている。「今回は絶対に勝たなくてはいけないので、慎重かつ大胆に戦う。ミーティングでもみんなに伝える」とMF中村。高畠監督は「平常心のみ。いい財産になる」と逆境での戦いをプラスに変えるつもりだ。