【マナマ(バーレーン)4月30日=菅家大輔】日本協会の田嶋幸三副会長(57)が、2度目の挑戦となった国際サッカー連盟(FIFA)理事選挙でトップ当選した。アジア・サッカー連盟(AFC)は4月30日に開催した総会でFIFA理事選挙を行い、田嶋副会長は36票の最多得票数で19年までの4年任期のFIFA理事に当選。11年に定年のため退任した日本協会小倉純二名誉会長以来、日本では4人目のFIFA理事が誕生した。

 険しい表情が一瞬で笑顔に変わった。11年1月の敗戦から約4年4カ月。2度目の挑戦で、36票の最多得票で悲願のFIFA理事の座をつかんだ田嶋副会長は、「すごい協力があったのが正直、プレッシャーでした。ホッとしたし、重い責任を感じる」と話した。

 「公職選挙法のない選挙」とされ、11年の選挙後には不正で複数人が永久活動停止処分を受けたFIFA理事選挙。そこに、真っ正面から純粋に立ち向かった。「日本が違反をしたら、日本の本来の良さがなくなる。ばか正直にやることで賛同者もいる」と貫いた。

 追い風も吹いた。日本協会が長らく続けているアジア貢献事業で、日本人指導者を派遣した国々が急速なレベルアップを遂げた。「選挙の時だけ来るのではなく、選挙じゃなくてもアジアのレベルを上げることを考えた」という地道な積み重ねが支持につながった。

 20年東京五輪パラリンピックの招致成功も大きかった。日本人の国際連盟理事を増やすため、文科省などが補助金を拠出。外務省は、田嶋副会長が選挙活動で行く国々の日本大使館で現地要人との交流会を催した。「行く先々で本当に力強く感じた」と振り返る。

 公正さで勝負した。監督や技術委員長を経験した現場の肌感覚を持ち、アジアサッカーの発展を最優先に主張した。自信はあったが、選挙前日の29日夜には田嶋副会長の評価を落とすうわさも流され、「支持票が減るかもと不安にもなった」と本音もこぼした。

 5月末のFIFA総会で正式に理事に承認され、直後の理事会に臨む。そこで18年W杯ロシア大会の各大陸の出場枠が決まる。アジアは現行の4・5から4へ減枠の可能性があるだけに「アジアが何を根拠に今の枠を守れるかを考え主張したい。世界のサッカーのため、そして何よりアジアのサッカーのために貢献したい」。FIFA理事としての責任感をみなぎらせた。

 ◆田嶋幸三(たしま・こうぞう)1957年(昭32)11月21日、熊本市生まれ。浦和南高-筑波大-古河電工。引退後、ドイツ留学してコーチ資格を取得。U-17日本代表監督などを経て日本協会技術委員長に就任。06年に同専務理事、10年に専務理事兼副会長。11年からAFC理事。

 ◆FIFA理事会 FIFAの最高意思決定機関。年に最低でも2回の理事会を開き、大会の開催地、予算の取り扱いなどを筆頭に世界のサッカー界における重要事項を決定する。会長、副会長8人、理事15人、女性理事1人の計25人で構成される。投票権のない事務総長も会議には入る。会長と女性理事はFIFA総会での選挙で決定。副会長8人と15人の理事は各大陸の選挙で決まり、FIFA総会で承認される。