川崎FのFW大久保嘉人(32)が、歴代単独4位となるJ1通算140得点を挙げた。東京戦の前半21分、MF中村のFKを頭で合わせ先制。横浜FCのFWカズ(三浦知良)の139得点を超え、仲間と1日限りの「カズダンス」を予告通り披露した。後半2失点し、逆転負けを喫したが気持ちを切り替え、今年中に中山雅史氏が持つJ1最多の通算157点を目指す。

 レジェンド超えの記念弾を決めた瞬間、大久保はカメラがひしめくメーンスタンドに駆け寄った。カメラに向かって「1度しか練習していない」というカズダンス。アシストしたMF中村らも駆け寄って即興で踊り、最後は天に指を突き上げた。

 大久保 (ダンスの)動きがスムーズだったと、やりながら思った。(仲間と)合わせたのもバッチリ。

 小学生時代からテレビで見るカズのスター性とプレーにあこがれた。遊びでカズダンスをまねしたこともある。「当時はプロになるとも、ここまで点が取れるとも思ってなかった」。32歳になった今、カズの持つ記録を超え、J1通算得点の単独4位に躍り出た。

 昨季はリーグで得点王に輝き、W杯にも出場。疲れをとるため、オフは過去にないほどボールから離れて過ごした。家族旅行やテレビ番組の収録で、以前プレーしていたスペインに行くなどリフレッシュ。今年1月は「サッカーがしたい」という飢えた気持ちで始動した。練習後も居残りでシュート練習に励み、チームスタッフがコンディションを気づかって止めに入ったこともある。もっとできる、もっとうまくなりたい-。その気持ちが今も進化を続ける原動力になった。

 メンタルも「ネガティブなことがあっても口に出さない。出すとそのまま落ちていくから」と弱音を吐かず前を向く。チームは後半19分にDF車屋が2枚目の警告で退場。10人で粘るも、セットプレーから2失点して逆転負けを喫した。「今日ほど悔しい日はなかったね…。勝利に結びつかなかったのが残念。でも、連戦ですぐ次の試合が来るからそれがまた、いいのでは」と、すぐさま気持ちを切り替えた。

 次に狙うのは中山氏が持つ歴代1位のJ1通算157得点を超えることだ。今季は9試合7得点と量産態勢で「次はゴンさんでしょう。そこを目標にいければ。そうすれば優勝に近づくかな」。ゴン超えまであと18点。エースが目標を達成すれば、チームの優勝も見えてくる。【岩田千代巳】

 ◆カズダンス ブラジル時代の89年、一時帰国した際のテレビ出演で芸能人との試合に出場。ゴール後に足を交差させるダンスを披露したのが初め。その後、アレンジを加え、独自のスタイルを確立した。93年のJリーグ発足直後にはサッカー人気の急騰に合わせて大ブレーク。日本で最も有名なゴールパフォーマンスとなった。神戸時代の同僚だった朴康造は現役時に「本家公認」でゴールした際に披露。広島FW佐藤も14年7月の大宮戦でカズのJ1通算得点記録の139得点を更新したときに踊った。近年のカズは「ここぞ」というときにしか披露していないが、11年3月29日の東日本大震災復興支援チャリティーマッチでゴールを決めて祈りのステップを踏んだ。今季はJ2リーグ戦の得点時に2度披露。