優勝決定戦のフィナーレのようだった。勝利の笛を聞いた浦和の選手たちは、ピッチ中央で円陣を組み、喜びを爆発させた。DF槙野智章(27)は「いつもは守備陣だけでやりますけど、今日はみんなで攻守に走り回りましたから」と破顔した。

 それだけ喜ぶ理由があった。決勝アシストのMF宇賀神友弥(27)は、試合終了と同時にピッチに突っ伏し、地面に何度も拳をたたきつけた。「去年の試合で負けた瞬間、G大阪の選手がうちのベンチに向かってガッツポーズしたのを、ずっと悔しく思っていた」と明かした。

 昨年11月22日。残り3節で単独首位の浦和は、ホームでの2位G大阪戦に勝てば優勝が決まる状況だった。満場の期待と声援を受けて攻め続けたが、ゴールが遠かった。試合終了直前、あせって前がかりになったところを突かれ、カウンターで2失点して敗れた。

 柏木は「ここで勝って優勝を決める、という雰囲気をつくりすぎた。冷静になってみれば、優勝のためには引き分けでも良かった」と悔やんでいた。今度はリーグタイトルを意識しすぎず、1戦1戦を冷静に戦いたい-。節分の恵方巻きすら、一貫(1冠)を意識しすぎては良くないと、全タイトルの7冠に合わせて7貫のすしに変えて食べた。

 他の選手も、それぞれ昨年の反省を生かした。今季は先制点が遠くても「最悪0-0でもいい」と冷静さを失わない。前がかりになってカウンターを食らう悪癖は消え、終盤の得点で着実に勝ち点を奪ってきた。

 この試合でも選手たちは「スコアレスの時間が続けば続くほどいい」とうなずきあった。パス回しでG大阪FW宇佐美、パトリックを守備に走らせ、ゴール前に飛び込む体力をそぐ戦略もはまった。

 いつも自己評価が厳しい柏木も「完全に狙い通りの試合運び」とうなずく。9年ぶりのホームG大阪戦勝利で、完封に至っては17年ぶり。開幕9戦無敗もクラブ記録だ。しかしそれ以上に試合運びの成熟ぶりから、各選手は悲願の優勝に向けた手応えを強く感じていた。【塩畑大輔】