浦和DF槙野智章(28)が今季も「デュエル」でリーグを盛り上げる。従来の3バックの左ではなく、中央でプレー。攻撃参加の回数を減らし、相手FWへの対処、ピッチ上の監督として守備をオーガナイズする役割に徹した。

 「もっともっとよくなる。満足もしていません。ただ、昨年までの反省は生かせたと思っています。ずるずるラインが下がる。60分以降にバランスが崩れる。失点後に落ち着きがなくなる。その反省点を踏まえて、周囲に声をかけ続けました」。

 後半には前線の1トップ2シャドーに、やや下がり気味に構えるように要請。セカンドボールが拾えるようになり、最終ラインを押し上げやすくなった。猛攻を仕掛ける柏にいったんは追いつかれたが、しっかりと守備を修正し、勝ち越しての勝利につなげた。

 そして出色だったのは、柏FWディエゴ・オリベイラとのバトルだった。自軍最後方に残り、スピード、パワー、技術すべてに長けた1トップとガチンコ勝負。身体をぶつけ、ねじ込み、走り勝つことで、決定機をつくらせなかった。

 火花が散りそうなほど激しい球際の攻防は、まさに「デュエル(決闘、転じて球際の争い)」と呼ぶにふさわしかった。槙野は「今季リーグのテーマの1つはデュエルですから」とうなずいた。開幕前の合宿中、今季の判定の指針を説明されるレフェリー講習会を受けた。

 「バチバチとぶつかりあっても、多少のことではファウルは取らないと言われた。今日もその通り、主審はやり合いの中でも笛を吹かなかった。デュエルのところをファンに楽しんでもらえるように、はからってくれていたのだと思う。だから僕らも、それをピッチで表現しないと。浦和だからというよりも、1選手として、Jリーグはこれだけできるというところをみせていきたいです」。

 「デュエル」という言葉広め、球際の強さにこだわる日本代表ハリルホジッチ監督も、視察を終えて「素晴らしい試合だった。リーグのレベルが1段上がりそうな予感がある」と絶賛した。明るいキャラクター、果敢な攻撃参加でファンを魅了してきた槙野だが、今季は激しいデュエルでスタジアムを熱狂の渦に巻き込む。