浦和の司令塔MF柏木陽介(28)が我慢のタクトで「人の城、人の石垣、人の堀」を攻略する。

 4月1日にホーム埼玉スタジアムで、リーグ甲府戦に臨む。「難しい試合。いいイメージはない」と話すとおり、チームはペトロビッチ監督が就任した12年以来、ホームで甲府に勝ったことは1度もない。

 堅守でならす甲府だが、アウェー戦はさらにブロックを固め、極端な守備重視のサッカーを展開する。城を設けなかった代わりに、信頼のおける有能な武将を領内に的確に配置し「人は城、人は石垣、人は堀」とうたった武田信玄の戦略を思わせる。

 そして相手が前がかりになった後方を、騎馬軍団よろしく、長駆カウンター攻撃で脅かす。この割り切った戦術は、攻撃サッカーを志向する浦和にとって、非常に相性が悪いスタイルだった。

 柏木はこの苦手カードを「こういうチームに勝っていかないと、タイトルはとれへんのよねと意識してやる。同じことをしていたらあかんのよねと」と悲願のタイトルに向けた試金石と位置付けた。

 柏木 我慢しながら、ここぞというところを狙って、攻撃にかじを切りたい。とりあえず、オレのところから縦パスを打ち込みすぎないことも大事。真ん中で組み立てる時は、槙野と森脇くんは高い位置をとっている。その時に、縦パスを打ち込んでインターセプトされるのが一番危険。でも狙うところ狙わないと始まらない。我慢しながら、機をみて入れる。

 堅守の相手を攻めあぐねても、攻め急がないことも重要だと強調する。

 柏木 ホームだと、サポーターのみなさんの「点を取ってほしい」という期待が、選手に自然と伝わってくる。森脇くんのところで時間がかかると、ブーイングも飛んでくるしね(笑い)。いずれにせよ、攻め急がず、我慢することが大事。こないだのW杯予選アフガニスタン戦のイメージに近い。

 浦和は14年は優勝したG大阪と勝ち点1差、15年は年間勝ち点1位の広島と勝ち点2差に泣き、タイトルを逃してきた。ホームでの甲府戦で勝ち点3を得られなかったことが、最後の最後で響く形になってきた。

 来週4月5日火曜日にアジアチャンピオンズリーグ広州恒大戦を控える関係で、甲府戦は金曜日夜の開催となった。そのため、前売り発券はいまだ2万2000枚程度と、集客面では苦戦も伝えられている。

 しかし、過去2シーズンを振り返っても、ホーム甲府戦は今季のタイトルの行方を占う重要な一戦。司令塔の柏木は入念に、甲府攻略の作戦を練っている。