磐田が苦しみながらも大きな勝ち点3を手にした。鳥栖に1-0。後半44分、セットプレーからDF大井健太郎(31)が右足で押し込み、決勝点を奪った。今季、エースFWジェイ(33)を欠いた試合での初勝利で、アウェーでは5戦負けなし。2013年にJ2降格決定を味わった地でのリベンジにもなった。

 「磐田のチカラを九州へ」。横断幕が掲げられたゴール裏へ、大井は両手を広げて走った。0-0で迎えた後半44分、DF中村太亮(26)のFKは相手DFにはじかれたが、ファーサイドで拾ったMF松浦拓弥(27)がダイレクトで低いクロスを入れた。大井が「ボールに触れれば」と出した右足にボールが当たり、コロコロと前へ。結果、鳥栖GKも反応できない“技あり”ゴールになった。

 大井は今季J1新潟から6季ぶりに磐田へ復帰。磐田では08年5月17日東京戦(1-2)以来2899日ぶりのゴールで、「たまたま当たって、うまいこと転がってくれた。ラッキー」と振り返った。

 試合後は選手全員が肩を組んで並び、サポーターと歓喜を分かち合った。熊本地震の影響が心配されたものの、名波浩監督(43)が「このタイミングで(九州での試合に)選ばれたことは運命だ」と言ったアウェー鳥栖戦。昨季までJ2熊本に所属していたFW斉藤和樹(27)をひと目見ようと、熊本サポーターも駆けつけた。選手、スタッフ、そしてサポーターがサッカーを楽しむ喜びに浸った。

 左足首打撲のジェイを欠く中、苦しみながら勝利を手にした。今季初先発したFW森島康仁(28)が前半18分、接触プレーの際に腰を痛めて負傷交代。斉藤が急きょ投入された。後半途中からは中村太をサイドに上げ、3バックで攻勢をかけた。1-5と大敗した前節ホーム横浜戦から5人を入れ替え、最終ラインも今季初めてDF小川大貴(24)を起用。名波監督は「ゲーム内容は不細工だったけど、しぶとく粘り強く我慢強く戦い、完封できたのは非常に大きい。ものすごく大きい勝ち点」と話した。

 13年11月10日(0-1)には、J2降格決定の悔しさを味わった場所での劇的勝利。目標の「J1残留」は着実に近づいている。【保坂恭子】