浦和がMF宇賀神友弥(28)の先制弾で、1-0でFCソウルを振り切った。テンポのいいパス回しで主導権を握り、アジア屈指といわれる相手攻撃陣に自由を許さず。FWズラタンを最終ラインに入れるスクランブル態勢で、終盤のパワープレーも防ぎ切った。この大会で韓国勢からの勝利は、07年準々決勝全北現代戦以来9年ぶり。アウェーゴールを許さなかったことで、25日のアウェーでの第2戦を前に、8強進出へアドバンテージを得た。

 街頭にまで立たせた「必勝」の念が、奇跡の弾道を生んだ。前半14分。左サイドのMF宇賀神は、DF森脇のサイドチェンジをダイレクトで中央に折り返した。これがGKの頭上を破り、ネットを揺らした。

 「ラッキーでした。チラシを配ったからだって、みんなに言われました」と宇賀神。16日午後6時半。浦和駅前でFCソウル戦の告知チラシをまいていたクラブスタッフの前に、私服でふらりと現れた。「銭湯行こうと思ったら、やってるから」と冗談めかし、自らもチラシを配りだした。

 これにはスタッフの士気も一気に上がった。3000枚用意されたチラシは、あっという間になくなった。「必ずいい試合になると思うけど、それだけじゃ普通の人は来てくれないから」。そう言い残し、宇賀神は駅前を後にしていた。

 宇賀神の登場で、チラシ配り自体が各方面で報道もされた。16日に前売り1万4000枚程度と苦戦していた集客が、2万人超まで盛り返した。前夜の東京-上海上港戦も9000人台。難しい平日夜の開催だったが、ゴール裏は真っ赤に染まった。

 宇賀神は「相手は強い。どうしても赤いスタンドの後押しが欲しかった」とうなずいた。開幕直後に右足つま先を捻挫。これを隠してのプレーでケガが連鎖し、本来の動きができない時期が続いた。それでも言い訳ひとつせず、黒子の働きを続けてきた。チームへの愛情が、天に通じた得点だった。【塩畑大輔】