山形の高卒新人FW永藤歩(18)が後半ロスタイムの47分に劇的な決勝点を決め、長崎を1-0で下した。後半41分に登場した永藤が、相手DFを振り切って右足で決めた。4戦ぶりに白星をつかみ、勝ち点を43まで積み上げた。仮に山形が連敗し、勝ち点37の21位北九州と22位金沢が連勝しても得失点差で大きく離しており、残留の可能性が高まった。次節12日の敵地山口戦に引き分け以上で残留が決まる。

 山形の「ワンダーボーイ」がチームを救った! 0-0の後半47分。MFディエゴ(32)が中盤から頭で前に落とすと、一気に加速した永藤が相手DF2人を振り切って胸トラップ。猛然とペナルティーエリア内に侵入し、体をなげうって豪快に右足を蹴り上げた。「ゴールしか見てなかった。あとは振り抜くだけ。正直ニヤニヤが止まらない」。決まった直後はチームメートにもみくちゃにされ、試合終了後にはGK山岸範宏(38)に抱きかかえられた。まだあどけなさが残る18歳が、救世主になった。

 石崎信弘監督(58)の狙いがはまった。「後半に入って動きがなかった。相手の裏を突いていける」と抜てき理由を明かした。手詰まりに陥っていた後半41分から5戦ぶりに出場。起用に応えた永藤は「最初からゴールしか狙ってなかった。相手DFもバテてた」と積極的に前に飛び出していった。

 爆発的な加速力が武器のFWとして市船橋高(千葉)から加入も、リーグ戦わずか9試合の出場にとどまっていた。練習試合でシュートを外すと先輩から「そんなのも決められないのか」と言われることもあった。永藤は「悔しいことも多かった」と回想しながらも「最近は練習試合からでもシュートを意識して、守備でも追えていた」と腐らなかった。前節からベンチに復帰させた石崎監督からは「しっかりトレーニングを積んでいる。練習の成果が出た」と絶賛された。

 暗い闇に光をもたらした。1日にはチーム内から逮捕者が出ており、この日の試合前に森谷俊雄社長(62)が謝罪していた。永藤は胸を張る。「チーム状況が悪い中で、結果を出せたのはデカい。来年にもつながる。あと2試合しっかり勝っていきたい」。18歳の救世主誕生で、モンテが息を吹き返した。【高橋洋平】

 ◆永藤歩(ながとう・あゆむ)1997年(平9)12月25日、千葉・成田市生まれ。FCボレイロ成田でサッカーを始め、順蹴フットボールアカデミーを経て市船橋高へ進学。15年5月にU-18日本代表で韓国遠征を経験。同年の総体準優勝。168センチ、65キロ。