「神ってる男」が栄冠をもたらした。プレミアリーグ東地区王者の青森山田が西地区王者の広島ユースにPK戦(4-2)で勝利した。GK広末陸(3年)が1本目を狙い通りに止め、最後は4人目のキッカーとして成功させ、試合を決めた。東京に内定し、U-19日本代表にも選出されている守護神は独特のルーティンを保持。MVPの活躍で初優勝に導いた。また黒田剛監督(46)は延長戦を含めた110分間を泥臭く走り抜き、0-0に抑え込んだ選手を評価。高体連の代表として、ユースチームを破ったことを喜んだ。

 広末は狙い通りに誘い込んでいた。110分間でも決着がつかずに突入したPK戦で、青森山田は後攻。1人目のキッカーの心理は手に取るように分かった。「(相手は)先攻で緊張している部分がある。強いボールが多いと狙っていた。誘導する形で手を出した」と落ち着いて右へ小さく飛んだ。強烈なグラウンダーのシュートはほぼゴール正面よりに。「パアン!」という音とともに太ももでセーブ。出ばなをくじいた。

 流れは続く。広島の4人目が枠外へとシュートを外し、決めれば勝利の4人目のキッカー。広末がボールを置いた。「4番目はもともと決まっていたんです。決めたら終わりと思ってた。PKは外したことがない」と右足を振り抜く。ゴールネットが揺れるとともに右腕を突き上げた。「何が起こったか分からなかった」と冷静な守護神も、待ちわびた優勝の瞬間だけは感情を爆発させた。

 ルーティンが、広島を相手に「神ってる力」を生んだ。まずはゴールの中に入り、正座をし目を閉じる。キッカーがボールを置き、ゴールを見る瞬間に顔を上げ、立ち上がる。続いてバーを2回ジャンプしてたたく。最後は右か左に腕を広げ、重圧をかけた。流れるような一連の動作。「ゴロも広く見えないし、座ってから立って手を広げると、でかく見える。バーをたたくのも嫌がる選手が多い。視覚で重圧を与える」と論理的に相手を抑え込んだ。

 悔しさをバネにした。東京U-18に昇格できずに青森山田へ進学。「シュートストップに難があると。それをポジショニングで磨いた」と雪国で自らの長所をひたすら伸ばした。前節では因縁の東京U-18を撃破。「日本一の結果を残すために青森に来た」とユースチームに負けるわけにはいかなかった。

 30日には全国高校サッカー選手権が開幕する。「日本一としてマークされるが、結果を残さないと」と意気込む。世代最強を証明し、プロへの手土産にする。【島根純】