2位に躍進した12年以来、5年ぶりの開幕連勝だ。ベガルタ仙台は4日、アウェーでジュビロ磐田と対戦し、1-0で勝った。後半29分、FW石原直樹(32)のパスを受けたMF奥埜博亮(27)が右足で決勝点をたたき出した。守備陣も磐田のキーマンMF中村俊輔(38)を封じ、粘り強く守っての連続完封劇。厳しい試合展開をものにし、苦手を相手に大きな勝ち点3をゲットした。

 渡辺晋監督(43)は「開幕戦より難しいゲームになる。我慢比べだ」と選手を送り出した。前半は堅守で耐え抜く。19分、誰もが「やられた」と思った相手エースFW川又堅碁(27)の強烈なシュートを、DF平岡康裕(30)が体を投げだし、胸で合わせてコースを変えた。31分にはMF富田晋伍(30)が磐田MFアダイウトン(26)の強烈なシュートを顔面でストップ。決定機を逃した磐田の歯車が、徐々に狂い始める。

 指揮官は「我慢したら(相手に)隙が生まれる」とも指示。その、少ない決定機に恵まれたのは後半29分。前線で囲まれながらも、FW石原はまるで忍者かピエロのように、巧みにボールをキープ。詰めてきた奥埜を確認すると、値千金のパスを送った。決めた奥埜は「(石原が)右足でダイレクトに打てるところにボールを落としてくれた。あのコースしかなかったと思う」。開幕戦と同じく終盤にさしかかった時間帯で、少ないチャンスを、FW2人で確実に仕留めた。

 虎の子の1点を守り抜いた。GK関憲太郎(30)は「(シーズンは)始まったばっかりだけど、手応えというのはある」と実感を込めた。中村俊を封じたことも大きい。紅白戦や練習で対策してきた成果が出た。渡辺監督は「中村俊の効果的な前へのパスはほぼなかった」と言い切った。

 震災翌年、大躍進した12年と重なる。15勝7敗12分けで2位に上り詰めた。厳しい試合に耐えて、勝ち点を重ね続けた。奥埜は「あのときは負けた印象がない。こういうようなゲームを勝ったり、引き分けたりして上位に行った」と類似性を指摘した。12年も主力だった富田は「こういう試合を取れたことは、目標の順位(トップ5)に近づく」と、うなずく。あのとき「負けない仙台」が、被災地の光だった。

 まだ開幕から2試合。それでも、あのときのサッカーを取り戻しつつある。自信も徐々に宿っている。大躍進の足音は、大きくなってきた。【秋吉裕介】