復興への思いよ、届け。ベガルタ仙台が、東日本大震災後初めて3月11日にホーム戦を開催した。阪神・淡路大震災を経験したヴィッセル神戸と対戦。「3・11」と「1・17」を背負う復興のシンボル同士で、ユアテックスタジアム仙台には献花台も設けられた。仙台は0-2で敗れ、連勝は2で止まったが、各会場で黙とうがささげられ、被災者を励ます横断幕も見られた。

 白星を届けたい、という思いが強すぎたのか。仙台は前に向かう気持ちが空回りし、一瞬のスキを突かれた。開幕2連勝時の動きとは明らかに違っていた。相手を上回るシュート13本も実らず、渡辺監督は「この日のゲームの重さ、意味の大きさは理解していた。そこへの準備もしていたが、もう少し選手をのびのびプレーさせてあげるべきだった」と唇をかみしめた。

 午後2時46分。スタジアムでは1分間の黙とうが行われた。試合開始直前には両チームの選手たちが約20秒間、目をつむり、震災に思いをはせた。特別な試合は後半に動いた。開始早々に先制点を奪われ、6分にも失点。前半は慎重に試合を進めた渡辺監督は交代枠を使い切り、総攻撃をかけた。ただ、クロスの精度が甘く、強引なシュートは枠を大きく外れ、ゴールは遠かった。

 震災後初めて「3・11」に行われた試合で、開幕3連勝はならなかった。主将のMF富田は「仙台を代表して発信すべき立場として、勝てなかったのは非常に申し訳なく思う」と頭を下げた。中学時代に大阪で阪神・淡路大震災を経験したMF梁勇基も「自分たちはまだまだということを気付かされた試合」と力不足を認めた。

 ただ、シーズンは始まったばかり。被災地を勇気づける機会はたくさんある。敗戦後、サポーターからは温かい拍手がそそがれていた。【沢田啓太郎】