J1で16位のジュビロ磐田が、J1の舞台に踏みとどまった。名波浩監督(46)が「負ければ辞任」と背水の陣で臨んだ参入プレーオフ決定戦で、東京ヴェルディに2-0で勝った。前半41分、20年東京オリンピック世代のエースと目されるFW小川航基(21)が自ら獲得したPKを決め先制。後半35分にも小川航が獲得したFKから追加点を奪い、13年以来2度目となるJ2降格を回避した。

J1残留を告げる笛が鳴り響くと、サックスブルーに染まった磐田の本拠地ヤマハスタジアムが大歓声で揺れた。祝福ムード一色の中、名波監督は鈴木コーチと静かに握手を交わしただけ。ベンチ前にできた歓喜の輪に加わることもない。全身を包み込む安堵(あんど)感をかみしめているようだった。

全てを懸けて臨んだ。試合後の会見で名波監督は「負ければ確実に辞めていた」と明かした。1日のリーグ最終節のアウェー川崎フロンターレ戦では、残り30秒で決勝点を与え敗戦。16位に転落し、参入プレーオフ(PO)に回った。「チームとして(POは)必要のない1試合であったことは確か」。過去3度の年間優勝を誇る名門クラブのレジェンドとして、その責任を重く受け止めていた。

指揮官の覚悟に、選手も応えた。MF山田は「責任を背負ってくれる監督。『名波さん』のためにと戦った選手も多かったと思う」。試合前には、これが今季最終戦だったにもかかわらず、ベンチ外となったメンバーが自発的に練習を行った。山田は「『気持ちは同じだから』と言ってくれた選手もいた。これが、名波さんが築き上げたもの」と続けた。決戦前に、一体感は高まった。

大一番で、負傷を抱えるFW川又とMF中村の実力者が先発を外れた。主力に長期離脱者が相次いだ今季を象徴するような事態。それでも前半41分、川又に代わって先発したFW小川航がPKを決めて先制した。後半35分にはゴール前で相手のファウルを誘い、MF田口のFK弾を演出。最後を交代出場した中村が締める采配もさえ渡り、東京Vをシュートを2本に抑える快勝で退けた。

「このゲームに至った責任は全て僕にあることは事実。クラブに迷惑をかけるかもしれないけど、少し時間をもらいたい。現状、そこまでしか話せない」と最後まで進退について明言を避けた名波監督。ラストマッチでJ1残留をつかんだ磐田だが、クラブには「名波監督続投」というラストミッションが残っている。【前田和哉】

◆J1参入プレーオフ決定戦 今季から導入。04~08年に行われていた「J1・J2入れ替え戦」に当たる。04~08年はJ1の16位とJ2の3位が対戦。09年に入れ替え戦は廃止され、11年までJ1の下位3チームとJ2の上位3チームが自動入れ替え。12年からは、J1の下位3チームの自動降格は変わらず、J2からの自動昇格は1枠減。残る1枠をJ2の3~6位によるJ1昇格プレーオフで争っていた。