<J1:大宮3-2川崎F>◇第13節◇17日◇等々力

 プロ10年目、30歳のベテランの習慣と計算が生んだJ1日本人最長弾だった。川崎F戦の後半42分。ハーフライン自陣寄りで味方が倒されFKを得ると、大宮MF小林慶は相手守備陣の態勢が整う前に右足でシュート。グングン伸びた放物線は、日本代表GK川島の指先をかすめ、ゴールに吸い込まれた。

 「(FKなら)外れてもゴールキックから始まるし、いい流れを断ち切ることもない。あの瞬間しかなかった」。約55メートルの超ロング弾。試合開始直後に、川島が少し前に出ているのに気づいた。GKの位置を確認するクセは体に染みついている。自然とロング弾のイメージを浮かべ、チャンスをうかがっていた。

 イングランド代表MFベッカム並の超ロング弾を生んだ背景には、欧州サッカーの研究があった。オフの昨年12月にオランダとスペインを回り、Rマドリード-バルセロナの「クラシコ」を観戦。バルセロナのグアルディオラ新監督の現役時代が目標というだけに刺激を受け、本家ばりの流れを読む目にも磨きがかかっていた。

 0-2から追いついたチームを最後、見事な逆転勝ちに導いた。試合後、スタンドに走り寄ると、サポーターから大きなコールで祝福された。「名前を呼んでもらうのは、選手として最高の幸せ」。記録的な一発を決めた「大宮のグアルディオラ」は、恥ずかしそうに口元をゆるめた。【村上幸将】