“降格を知らない男”が札幌に奇跡をもたらす。前節の清水戦を出場停止で欠場したコンサドーレ札幌のMFクライトン(30)が、20日のホーム千葉戦(札幌厚別)でスタメン復帰する。今季22試合に出場している中盤の要は、長いサッカー人生でも降格未経験。残留を争うライバル17位千葉をたたき、逆転残留に望みをつなぐ。チームは18日、3週連続となる非公開練習で戦術を確認した。

 残り10試合にすべてをぶつける。降格を経験したことがない“サッカーエリート”MFクライトンは「可能性がある限り最後まで戦う。自分みたいに経験のある選手が声を出して雰囲気づくりしないと結果は出ない。プロフェッショナルな姿勢で戦っていかなくては」と力を込めた。

 勝利の味、勝利を呼ぶ術は心得ている。ブラジルのサントスFCやフラメンゴなどビッグクラブを渡り歩き「常に優勝争いの中でチームに貢献してきた」。栄光の過去と苦悩の現在。理想と現実のギャップを感じながらも、J1残留のために完全燃焼する覚悟だ。

 出場停止だった前節の清水戦はテレビ観戦。覇気の感じられないチームの戦いにフラストレーションがたまった。「清水の選手に気合を感じた。勝ちに値するプレーをしていた」。前日17日の練習では、監督以上に声を張り上げて仲間を鼓舞する姿が目立った。「あきらめずに最後まで戦うことが大事。やっているのは自分たちでも、応援してくれている人はたくさんいるんだ」と訴えた。

 チームメートの戦いだけではなく、前節の千葉対東京Vも「戦術が気になるから」とテレビ観戦した。予習は完ぺき。イメージトレーニングもできている。就任後初めてとなる3週連続の非公開練習に踏み切った三浦監督も「クライトンは攻撃に関して期待できる。(欠場だった)この間(前節)は、ボールキープができないでFWにいいボールが出なかったから」と、復帰を待ち望んでいた。

 自動降格圏の上にいる16位磐田との勝ち点差は9。厳しい状況なのは確かだが、絶体絶命のピンチこそ、サッカー人生で培ってきた地力を発揮する絶好機にもなる。