<J1:磐田5-0札幌>◇第28節◇5日◇ヤマハ

 磐田が、7試合ぶりに降格圏を脱出した。最下位札幌との“がけっぷち”対決を、FW前田遼一(26)の3年ぶりのハットトリックなど今季最多5得点で圧勝した。特にMF犬塚友輔(24)が札幌の司令塔MFクライトンを完ぺきに封じ、さらに後半ロスタイムにはミドル弾。この最後の1点で大宮に加えて東京Vも得失点差で抜き去り、15位に浮上した。J1残留へ、光が見えてきた。

 お祭り騒ぎの最後を締めくくった一撃が、磐田を押し上げた。4-0で迎えた後半ロスタイム。FWカレンの落としに、犬塚が右足を一閃(いっせん)した。「うまく足に当たってくれた」という28メートルの弾道は、無回転でブレながらゴール左に突き刺さった。「監督には『0-0の時に取っておいてくれよ』と言われました」と笑う“ボーナス”のような1点。だがこの1点が、後に大きく響いた。

 試合終了から2時間後。残留を争う東京Vが、終了間際に名古屋に追いつかれて引き分けた。勝ち点32でともに並ぶも、得失点差でわずか「1」磐田が上回り15位に浮上した。7試合ぶりの降格圏脱出。応援ボード「12」を掲げて鼓舞したサポーターとの一体感が、チームを押し上げた。

 エース前田が、前半だけで3年ぶりのハットトリックを達成し、昨年8月15日東京戦以来の大量5得点。だが、GK川口は「本当なら、この試合のMVPはワンちゃん(犬塚の愛称)」とたたえた。司令塔クライトンに、右に左に前に後ろにと、とことん食らいついた。パスを出させず素早い寄せでつぶす。反則で倒されたクライトンが主審に文句を言い、反対に警告を受けるほどイラつかせた。

 Jリーグ(J1)の歴代外国人監督でトップタイの99勝目を達成したオフト監督は「ワンちゃんという名前を変えて『(警察犬や軍用犬に使う)ジャーマン・シェパード』と呼びたい」と絶賛。犬塚も「監督から、前回(新潟戦)以上に良い感じでほめてもらった」と喜んだ。新潟戦で10戦目にして「先発不勝」のジンクスを破った犬塚が、一気に勝ち運を呼び込んだ。【今村健人】