<高校サッカー静岡県大会:藤枝東2-0常葉学園橘>◇16日◇エコパスタジアム◇決勝

 ふじ色軍団が最後に笑った!

 昨季全国準優勝の藤枝東が県総体4強の常葉学園橘を2-0で破り、2年連続23度目の全国切符を手にした。前半22分に左CKから、腰痛をおして強行出場したFW新井成明(3年)が頭で先制。同35分にも左CKからオウンゴールを誘い、突き放した。今季は無冠と苦しんできたが、就任1年目の大石和孝監督(51)の下で最後に、花開いた。全国選手権(12月30日開幕)の組み合わせ抽選は、17日に行われる。

 苦しみを解き放つ、歓喜の笛が鳴った。試合終了の瞬間、ピッチに倒れ込んだのは、敗れた常葉学園橘の選手だけではなかった。藤枝東イレブンも突っ伏し、きつく抱き合い、全身で喜びを分かち合った。MVPのMF小林勇輝主将(3年)は「自分たちの代で優勝できたことが、何よりうれしい。今はとりあえず、ゆっくりしたい」と両肩の重荷を解き放ち、笑った。

 シュート数は4本。常葉橘の11本に及ばない劣勢の中で、連覇への扉をこじ開けたのは強行出場の新井だった。前半22分の左CK、1度は頭上を越えたボールが戻ってきた。2日前にブロック注射を2本、当日も座薬と痛み止めを服用した腰痛をこらえて跳んだ。「思い切りヘディングした」という弾道はゴール右隅へ。瞬間「うれしさのあまり、痛みを忘れて」応援席へ猛ダッシュしていた。

 出場は「すっごい不安だった」と新井。週初めは歩けず、寝返りも打てなかった。だが、源泉を見つけては訪れた温泉療養の効果でフル出場。周囲も、昨季を知る小林と藤田息吹(3年)のダブルボランチが支え、DFもこらえた。FW村松一樹(3年)は「初めて」すねまでつるほど、新井の代わりに走った。大石監督は「チーム一丸となった結果」と全員をたたえた。

 どん底から、はい上がってきた。全国準優勝を受けた今季は新人戦2回戦、県総体3回戦で負けた。「全国準Vのユニホームを着て試合に出られればいいや、というのがあった」と同監督。小林も「結果を求められるのに、出なくて、苦しくて」と、昨年主将の鳥羽亮佑に電話で1時間、悩みを打ち明けたほどだった。

 変わったのは夏だった。「きれいでなく、泥臭いサッカー」を目指して、近くの蓮華寺池公園で9キロ走、翌日はダッシュ50本など、大会期間中も走り続けた。選手が「兄貴」と慕う大石監督も、四字熟語辞典を買って「自勝者強」の言葉を与えてきた。「自分に勝たないと相手に勝てない」。結果「春は猫かと思った選手が、ライオンになった」と同監督も目を細めた。最後にやっと手にした全国切符。小林は「挑戦者の気持ちを忘れずにもう1度、国立に帰りたい」と言った。藤枝東が、鮮やかによみがえった。【今村健人】