<J2:山形1-1熊本>◇第43節◇23日◇NDスタ

 勝てば地元でJ1自動昇格が決まる山形が、重圧にはね返された。下位の熊本と1-1で引き分けて、悲願達成はお預け。昇格は次節30日のアウェー愛媛戦に持ち越された。未体験の重圧に襲われミスを連発したが、小林伸二監督(48)は「この重圧に勝って自力で2位を勝ち取らないと来年(J1)は厳しい」と来季展望まで言及。勝ち点1を積み上げ入れ替え戦圏内の3位以内は確定させたが、次節こそ勝って決める。

 ロスタイムの猛攻に波打って歓喜したスタンドが終了の瞬間、潮を引くように静まり返った。イレブンは敗者のように、ひざに手をつき息をはいた。小林監督は「いつもは真ん中に入るクロスが、ちょっとブレたり、力が入って越えたり。見えないプレッシャーを受けていたんでしょう」と選手の胸中を察した。昇格に王手をかけた9日の徳島戦から2週間。悲願達成への上昇気流が泡と消えた。

 ホーム昇格の期待に締めつけられた山形に、最近4勝3分けの好調熊本が牙をむく。後半19分、FW木島にドリブルで持ち込まれ左足で決められた。後半25分に相手DF市村が退場。数的優位を生かし攻撃に転じたが、同43分にFW豊田が2ケタに乗せる今季10得点目となる同点弾を決めるのが精いっぱいだった。

 昇格の扉は1発では開かなかった。前日22日に3位仙台が引き分けて悲願達成のおぜん立てが整ったが、昇格争いの重圧も付いてきた。勝てば昇格の一戦。普段は20人前後の報道陣が175人も押し寄せ、観客も今季4度目の1万人超え。主将のMF宮沢は「(重圧は)見ての通り。愛媛戦までに重圧に勝つ準備をする」と修正を誓った。

 だが、そんな状況を指揮官は悲観するどころか、目標のもう1歩先さえ見ていた。昇格を勝ち取ることを前提に、次なる来季のステージ=J1をハッキリ見据えて言った。

 小林監督

 この重圧に勝って2位を自力で勝ち取れないと来年(J1)は厳しくなる。残る試合を選手が、どう戦ってくれるか見ている。1年でJ2に逆戻りするようではいけない。この状況で力を発揮できる人が、J1でも戦える。

 入れ替え戦圏内の3位以内を確定したが、もはや眼中にない。小林監督は「3位はいらない。自分たちの手で2位を勝ち取る」と力を込めた。残り2試合を、1勝か2分けでも自力での自動昇格が決まる。だが、ここまで来たら星勘定などしない。来季のために次節、勝って決める。【木下淳】