<天皇杯:G大阪3-1磐田>◇5回戦◇26日◇ヤマハ

 名波のために勝ちたかった…。磐田がG大阪に1-3で逆転負けし、今季の天皇杯が終戦した。23日のリーグ柏戦から先発10人を入れ替えて臨んだ一戦。開始41秒に、今季限りで現役引退するMF名波浩(35)のパスから、最後はMF西紀寛(28)が決めて先制したが、ひっくり返された。それでも名波は、悔しがる若手の思いが未来につながると確信。J1残留へ正念場の残り2試合に、最後の力を注ぐ。

 名波の左足からだった。幕が開けたのは。試合開始の笛が鳴って、まだ間もない41秒。ボールを受けるとすかさず、右サイドを走りだしたDF山本脩の足元にロングパスを合わせた。「太田や西が、高い位置で受けるイメージで練習していた。それがたまたま脩斗だったけど」。そこから生まれた右クロスが、西の右足に合った。全員が、名波と「もっと試合をするために」と臨んだ試合で、名波が、試合を動かした。

 前半15分に「スーパーゴール」(名波)を決められて同点とされ、後半10分にCKから逆転された。3点目を入れられた直後の後半30分に、名波も退いた。天皇杯の終息に、MF河村は「もっと名波さんと一緒にやりたかった。残念で、名波さんに申し訳ない」と唇をかんで謝った。

 ただ「名波のためにも」の気持ちはこもっていた。今季公式戦で初めて4-5-1を採用。リーグ戦から10人を替えた中で、アジア王者に果敢に挑んだ。今季最長の出場時間だった名波も「非常に楽しかったし、自分のパフォーマンスの出来は良かった」と言い、その上で「リスクを負っても後ろからどんどん人が出てきた。若いやつらは悔しがってもいた。それが未来につながる」と感じ入った。

 天皇杯は終わった。だが、J1残留をかけたリーグ戦があと2試合、残っている。次は鹿島戦(29日)。「残り試合はベンチスタートだと思うけど、みんな鹿島をリスペクトしないで戦える集団になってきた。中山さんとともに、鼓舞したい」。希代のレフティーの役割は、まだ終わってはいない。【今村健人】