<J1:浦和3-2柏>◇第10節◇5日◇国立

 赤い悪魔の勢いが、止まらない。浦和が20歳FWエスクデロ・セルヒオのリーグ戦初ゴールで柏に3-2で逆転勝ちし、暫定ながら首位の座に返り咲いた。前半だけで2失点の劣勢に苦しんだが、同点で迎えた後半42分、ゴール前でのこぼれ球をエスクデロが右脇腹で押し込んで勝ち越し。17歳FW原口、18歳MF山田直に続く若手の台頭で、2連勝を飾った。

 我を忘れ、体を投げ出していた。後半42分、エスクデロは味方の右サイド突破に合わせて、ゴール前へ忍び寄った。「相手はボールをクリアするはず。オレはこぼれ球を狙う」。FWエジミウソンのシュートが相手DFに跳ね返ると、171センチ、71キロの体を突進させた。右脇腹ではじいたボールが、ふわりと決勝のゴールネットを揺らした。

 「初ゴールを決めたらサポーター席に行こうと決めてました」。エスクデロは真っ赤に染まったアウェー席に両腕を突き上げて駆けだした。スペインとアルゼンチンを経て、07年6月に日本国籍を取得。05年のプロ契約から5シーズン目にして初めてリーグ戦で決めた得点が、苦戦を強いられたチームを救った。

 今季から運動量を求められる連動サッカーに変わった。大雨でぬかるむピッチと、16日間で5試合の過密日程で疲労もピーク。前半11分にエジミウソンのゴールで先制しながら、同24、38分に失点。エスクデロはベンチで燃えていた。後半23分、ルーキー山田直に代わって出場すると、前線のスペースに飛び込んで得点機を演出した。

 アルゼンチン出身の両親を持ち、父セルヒオ氏も元プロサッカー選手。身体能力と個人技での突破力に優れ、北京五輪代表候補に入るなど将来性を評価されていた。今季は新加入の原口、山田直が主力の座をつかみ、ここまで出場した5試合すべて途中出場。「ピッチに立てば年齢は関係ない。自分より力があるから彼らは出ている」と悔しさを胸の内にとどめて出番を待った。好物のジャンクフードを断ち、苦手の野菜をジュースにして飲み干す日々。「初得点ですから(シュートの形は)何でもいいんです」。我慢の日々が報われた。

 敗色濃厚だった試合を覆し、3月14日の第2節東京戦以降、9戦7勝2分け。若手の勢いが、浦和を再び首位に押し上げた。【山下健二郎】