J2仙台FW田中康平(23)にスタメン奪還のチャンスが舞い込んだ。今季14試合中13試合に先発したFW中島裕希(24)が、10日の富山戦で右ひざ内側側副靱帯(じんたい)を損傷。全治4週間と診断され、2トップの一角が空席になった。代役候補の筆頭が、その富山戦で中島と交代出場し今季初ゴールを挙げた田中。3月に2度の先発出場を遂げながら逃した定位置を今度こそ、つかみ取る。

 田中は富山戦で今季初得点を挙げて上り調子だ。難しい体勢から右足アウトサイドで決め、チームメートから「普通に左足で打てただろ」と冷やかされた。友人からも多くの祝福メールが届いたが、浮かれた気分はすぐ消えた。今季FW最多タイ3得点の中島が、最低でも第1クール残り3試合の復帰は絶望的。田中は「平瀬さんはもちろん、ソアレスも中原さんもいる。何が何でも、このチャンスをつかみたい」と燃えている。

 今季こそ殻を破るつもりだ。かつて鹿島、浦和、東京Vが争奪戦を繰り広げた元U-19日本代表だが、昨季までプロ5年間で13試合しか出場できなかった。それが「仙台に移籍して2年目。飛躍の年にしたい」と決めた今季は既に10試合出場。FWでは中島と田中だけ全14試合のベンチ入りを果たし、手倉森監督からも成長を認められている。

 昨年は5月31日の湘南戦で移籍初ゴールをマークしたが、翌週の練習で右足首をねんざ(全治3週間)。ブレークが期待された矢先に戦線を離れた。同じ轍(てつ)を踏まぬよう、この日は練習後、2時間かけてアイシングとマッサージで体調管理。昨季は年間を通じて左足裏の痛みにも悩んだが「足裏を入念にほぐして」再発を防いでいる。

 中島の負傷で先発の最右翼に躍り出たが「がむしゃらにやって、まずFW争いに勝ちたい」と田中。過去に年間の複数得点がなく「今年こそ、前年を上回れるよう2点目を取りたい」と話した。好機を得ては逃してきた男が「今度こそチャンスをつかみます」と力強く決意表明した。【木下淳】