悪夢の左ひざ重傷から238日ぶりに立つ柏サッカー場のピッチ。嫌な記憶がよみがえってもおかしくない状況だが、鹿島MF小笠原満男(30)は15日、「故障の記憶?

 嫌なこと言うね。忘れてたのに、言われたら気になるでしょ。場所も同じだしね」と普段通りの口調で淡々と話した。

 言葉とは裏腹に、心に刻まれる昨年9月20日の記憶。前半2分の接触プレーでひざが破壊された。故障直後にはクラブ幹部に強気の男が「もう引退だ」とこぼしたこともあったほどショックを受けていたが、すぐさま気持ちを切り替えたからこそ、厳しいリハビリを経て、全治6カ月より早く復帰することができた。

 3月7日のJ開幕浦和戦で復帰してから約2カ月。10日の清水戦ではバー直撃のFKを放つなど、「伝家の宝刀」の感触も戻ってきた。この日の練習後も居残りでFKを確認。「(今季は)サイドからのFKはあったけど、ゴール正面からはあまりなかったから練習した。今日は良かった」。悪夢を振り払う一撃を決める準備はできている。

 FKを決めれば、JリーグでのFK弾はセリエAメッシーナ移籍前の06年4月2日の大宮戦以来、1140日ぶり。J1通算FKゴール数も13に伸び、アルシンド、ウェズレイに並び2位タイとなり、単独首位のMF三浦淳宏の15点も射程圏となる。

 当然、主将として今は重傷の記憶より、記録より、チームの勝利を優先している。23日間で7試合の過密日程を5勝2分の好成績で切り抜け、その直後の一戦だけに「2分ということは勝ち点で1敗したのと変わらない。(中断まで)残り3試合、全勝でいきたい」と気を引き締めた。そんな闘将の右足がうなりを上げた時、現在リーグ単独首位の鹿島がさらに勝ち点3を積み上げる。【菅家大輔】