浦和FW高原直泰(30)が24日、出場機会の大幅減少を覚悟のうえで、来季も残留する考えを表明した。契約を1年間残した状態で、今月上旬に選手の若返りを進めるクラブ側から主力としての戦力構想から外れる方針を伝えられていたが「来季も浦和でやる」と明言。若手の台頭と補強によって厳しいポジション争いが予想される中、他クラブへの移籍は模索せず、試練のシーズンに挑む。

 円熟期を迎えたプロ人生の貴重な1年間を棒に振るリスクはあっても、迷いはなかった。この日、私用でさいたま市内のクラブハウスを訪れた高原は「もともと、自分の方から出て行くつもりはなかったし、来季も浦和でやることに変わりはない。チームが始動する1月11日に向けて調整します」と断言した。主力としての戦力構想外を通達されて以来初めてとなる、残留の決意表明だった。

 原口、山田直ら若手が台頭した今季、高原は本職のFWではなく、主にサイドアタッカーとしてリーグ戦32試合に出場(4得点)。しかし、先発出場は半分の16試合で、ベンチを温めることが多かった。来季は既に、広島MF柏木の加入が決定。クラブ側はJ2水戸にレンタル移籍していたFW高崎を復帰させる方針で、さらに現在、ブンデスリーガ1部ケルンのMFサヌーの獲得にも動いている。

 ポジション争いが激しさを増すうえに、戦力構想外。出場チャンスをもらえない「飼い殺し状態」となれば、昨年6月以来の代表復帰とW杯出場への道も閉ざされかねない。それでも、高原は「そういう状況は分かっています」という。他クラブが来季構想を固めつつある時期に移籍を勧められた格好となったところで、推定1億6000万円のJ最高年俸選手の引き取り先はないことを理解している。「この時期では(移籍は)難しいし、今からそれを考えるわけにはいかないでしょう」と覚悟を決め、新シーズンへの準備に取りかかることを優先した。

 日本のサッカー界をけん引してきた黄金世代のストライカーが来季、最後尾からのレギュラー奪取という試練に挑む。【山下健二郎】