<天皇杯サッカー福島県代表決定戦:福島ユナイテッドFC4-1バンディッツいわき>◇29日◇あづま陸上競技場ほか

 福島県は、東北社会人1部の福島ユナイテッドFCが同2部のバンディッツいわきを下し、3年連続3度目の本大会出場権を獲得した。10日に資金難で「緊急事態宣言」を発表し、勝利と金銭支援を求める戦いが本格化した。

 3連覇した福島Uイレブンは、早くも本大会の勝利を見据えた。DF金基洙主将(28)は「クラブがつぶれちゃうんじゃないかという不安はある。ただ、天皇杯は全国から注目される舞台。勝ちます」と決意。手塚聡監督(51)も「現場はJFL昇格を目指すだけ」とした上で「困ってるからお願い、では無理。姿勢を認めていただかないと」。白星が危機的状況の打破に直結すると信じて戦った。

 将来のJリーグ参入を目指し、約4000万円の年間予算で身の丈経営を進めた。だが、今月上旬時点で1000万円が不足。10月に資金ショートを迎える可能性が高まり、10日に「緊急事態宣言」を発表した。その後、3つの柱を立てて改善を進めている状態だ。

 (1)胸スポンサー募集

 現在は空白のユニホーム胸部分の広告を募ってフロントが奔走。宣言発表後「問い合わせが増えました」と運営担当。

 (2)サポータークラブ会員の募集

 レギュラー会員(年会費3000円)5000人を目標にする。宣言前は約2100人だったが「おかげさまで200人ほど増えました」と広報担当。

 (3)福島Uへの募金のお願い

 サポーターがフロントに話を持ち掛けて実現。28日の準決勝から会場入り口で実施。選手も協力した初日は17万7351円が集まり、この日も実施された。

 資金難解消へ最大の効果が生まれる方法が(1)。そのための絶好のアピール機会が天皇杯だ。昨年は2回戦で当時J2首位のC大阪に2-1で勝ち、ジャイアントキリング(大物食い)を達成。次の横浜戦は、快挙に注目したNHKが全国に生中継し、JA全農福島とスポットでの胸スポンサー契約を結べた。勝てば、再び企業が手を挙げる可能性はある。

 そのために今年も勝ち進む。9月3日の1回戦(対ソニー仙台)に勝てば、同5日に同じ東北のJ1仙台と対戦できる。手塚監督は「結果が出れば行政も動きやすくなるだろうし、支援が広がると信じたい」と希望を口にした。【木下淳】